rainy day 2 (ページ42)

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91話『勝手な都合』ページ42

Y「……えっ？」

想像してたより
ずっと、驚いた顔したハナが

俺の顔を見つめながら
言葉を無くしてる…

短い沈黙。

それに耐えかねて
先に声を上げたのは、俺だった。

D「そっ、そんな顔しないでよっ
別にどうって事ないだろうっ？」

Y「………。」

D「もう少しだけ、離れて暮らすってだけだよっ」

勤めて明るく振る舞ったのは
せめてもの俺の強がりで、女々しい虚勢だった。

……俺の事、何とも思って無いハナは
こんなの平気でしょ？

そんな顔する必要なんて、無いだろ？

Y「……どうして？」

D「えっ？」

Y「どうして急にっ？
昨日はそんな事、一言も言って無かったのに…」

うん…そうだよな
そりゃ、そうだ

だって、今決めたんだもん。

D「あーっ、タイミング逃しちゃっててっ」

Y「……私の、せい？
私っ、何かテソン君を怒らせる様な事っ…」

不安そうな顔して
恐る恐る、そう言いかけたハナに

チクッて、少しだけ胸が痛んだ。

D「はっ？そんな訳で無いでしょっ⁉
俺の、勝手な都合だよっ」

……そう

全くもって
俺の『勝手な都合』なんだ。

D「ほらっ、もうすぐソウルでもライブあるでしょ？
それまで、色々と大変でさっ」

「しばらくは、準備とかで
事務所に缶詰になっちゃうから…
家には、なかなか帰れなくなると思うんだっ」

「なんか、勘違いさせちゃったかな？
……ごめんね、言い方が悪かったよっww」

咄嗟に

出た嘘にしては
上出来だった。

この、数ヶ月で格段に
俺は嘘を吐くのが、上手くなったかも知れないよ。

Y「……本当、に？」

D「ははっ、嘘付いてどうすんの？」

少し呆れた様に
ハナの顔を見ながら笑えば

「良かった。」なんて

俺の身体と同じくらい馬鹿正直な彼女が
ホッと、息を吐いて見せた。

ハナ、俺は上手に
君を騙せてる？

本当はね
全部、全部、嘘なんだ。

だって

正直に、言える筈が無いよ……

このままじゃ
今、すぐにでも

このテーブルに君の事押さえ付けて

『食べちゃいそうだから。』

D「……ほらっ、ハナ
早くご飯、食べちゃおうよ？」

Y「あぁっ、そうだった！」

ねっ、そうでしょ？

君にそんな事
言える筈が……無いだろう？