rainy day 2 (ページ40)

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89話 Y 分厚い手の平。ページ40

Y「あっ、もぉ～っ…またこぼしてる。」

D「……へっ？」

Y「テソン君っ、またご飯こぼれてるってっ」

D「……へっ？」

Y「……へっ？じゃ無いですよっ！」

って、このやり取りは
これで一体、何回目なんだろう？

『心、ここに在らず。』

朝からそんな調子のテソン君は
白いお米粒を、黒いTシャツにくっ付けながら

D「ごめん。」

って、少し気まずそうに私の顔を見ると
パッて直ぐに、その目を伏せた。

Y「………？？？」

今日のテソン君は……

真冬の朝から水浴びをして
ご飯を、ポロポロとこぼして

私を微妙に、避けて居る。

……リビングのテーブルには
まだ、昨日のお土産が残ってて

楽しそうに
私をからかって笑ったテソン君と

今、目の前に居る彼は

まるで、昨日とは
別人の様にも、思えてしまう。

Y「……あのっ、テソン君？
服が、汚れちゃてるけど……」

D「あっ、あれっ？ヤバッ‼
本当だっ、お米いっぱい付いてるっ」

自分でも驚いた様子で
彼はその場に立ち上がると

シャツに付いたお米を、手で一生懸命に払ってる

D「あーっ、なかなか取れないや…」

Y「ふふっ、ちょっと待ってて下さいねっ」

子供みたいなその振る舞いが可愛くて
私も笑いながら立ち上がると

丁度、手元にあった
濡れたフキンを手に取って彼に近付いた。

Y「ほらっ、こうすれば取れまよぉ～っ」

そう言いながら
彼の黒いTシャツを軽く引っ張って

少しだけ、そこに顔を寄せると……

D「ちよッッ‼」

彼は、何か''嫌なもの''でも
見付けた様に驚いて

私の身体を、咄嗟に押しのけた。

Y「キャっ」

……それは

まったく
強い力じゃ無かったけど……

『拒絶』って言う

分厚い手の平で
思いっ切り、突き飛ばされた様な

そんな、気持ちになった。