rainy day 2 (ページ31)

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81話不吉な予感。ページ31

……世の中には

『不吉な…』
と、称される出来事が、いくつか存在する。

例えば、グラスが割れるとか……

『ガシャーンッッ』

D「わッッ、ごめんッ‼」

S「酷いよっ、ヒョンッッ、今のわざとでしょっ⁉
わざと俺の足元にグラス落としたんでしょっ⁉」

例えば、今日が13日の金曜日であるとか……

G「ねぇねぇ、じぇいそん、くるかなぁ♪♪♪」

YB「えっ、それ誰？アメリカ人？」

D「……多分、ジェイソンはアメリカ人だと思う。」

例えば、悪い夢を見て飛び起きると
時計の針が、午前4時44分を指しているとか……

そんな時、人は
息を飲んで、こう言うんだ

「……不吉だ。」

今日、たまたま俺の手からすり抜けたグラスが
運悪く可愛い弟の足元に落ちて、割れた。

……確率的には7分の1
1年の間に、1～3回訪れるとされる13日の金曜日…

たまたまそれが、今日だっただけ。

……後1分早く飛び起きてれば
時刻は、午前4時43分で、なんて事の無い数字だ。

『たまたま。』

それは『不吉な予感』でも何でも無い

『たまたま。』

だから、何の心配も要らない
俺たちの日常は、決して、変わらない。

……そうだよね、ハナ？

無意識のうちに伸ばした手が
枕元の携帯電話に触れると、それをキュッと握りしめた

……まだ、夜も明けきらないこんな時間だ
きっと彼女は眠ってる。

幸せな夢見てるでしょ？

何故か感じる、この『嫌な予感』は
俺の思い過ごしなんだよな？

それなのに
……その筈なのに

ジワジワと絡みつく様な不安が
身体中を這い回る様で

「気持ち悪い。」

溜め息混じりの、呟きと同時に
素早く携帯を開くと

俺はそれを、自分の耳に押し当てた。

『もぉ～っ、こんな時間にぃ……』

なんて、ハナが眠そうな声で
俺を心配性だと笑えば、安心出来るんだ

ただ一言、声を聞けばいい。

………でも

聞き慣れた筈の、その呼び出し音が

今日はまるで
耳障りなカウントダウンみたく聴こえて

このままハナが
この電話に出てくれなきゃ

そこでゲームセット、試合終了。

……そんな、縁起でもない感覚に
何故か俺は襲われた。

「ハナ、お願いだから早く出てよ…」

俺のこの声は
飛行機で2時間の距離を飛び越えて

ちゃんと、彼女の耳に
届くんだろうか？

「……俺を不安に、させないで…」

鳴り止まない呼び出し音が
そんな独り言を、呟かせてた。