rainy day 2 (ページ26)

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76話トリ頭。ページ26

ハナって、嘘が付けないタイプだ。

……だけど
そんな所も彼女の魅力だと

この期に及んでまで

愛しさを感じてしまう俺は
全く救いようの無い、阿呆だ。

………明かりの消えた部屋の、ベッドの上で
ハナが包まった布団が、小刻みに揺れてるのが分かる。

それで寝たふりしてるつもりかよっ？
この、下手っぴっ

そんな事しなくったって

ただ『ごめんなさい』って
その一言だけで、良かったのに……

君を困らせるつもりは
これっぽっちも、無かったんだ。

「……だから、そんなに、泣かないでよ。」

君が泣くのが
実は1番、辛いんだ。

D「ねぇ、ハナ？いい事を教えてあげる。
……俺はね、トリ頭なんだよっww
トリって嫌な事は3歩も歩けば忘れちゃうだって…便利だろっ？」

「だから、何も心配しなくていいよ
この部屋から出る頃には、全部、忘れてる」

「……明日には、全て元通りだよ。」

だから、ハナも
変な気を起こすなよ？

また居なくなるなんて、反則だからな？

……まだ、小刻みに震える
布団越しのハナの頭に

そっと優しく、手の平を乗せた。

D「また、明日ね」

「………おやすみ、ハナ。」

このベッドから
リビングに繋がるあの扉まで…

あの扉までの距離が
ハナの事を好きで居られる、最後の時間だ。

一歩、一歩、足を進める度に
彼女への想いを、この部屋に捨てていく

ハナを、これ以上、困らせない様に
……ハナを、これ以上、苦しめない様に。

『3歩も歩けば、全てを忘れる、トリ頭』

あいにく俺には
そんな特技は、無いけれど

全てを忘れてしまっても
……俺はきっと性懲りも無く、また同じ様にして

ハナに、恋をしてしまうのかも知れない。

その度また
こんな風に傷付いたとしても

何度でも、何度でも
……傷つく事さえ忘れて

俺は君に恋をしてしまう……そんな、気がする。

『……カチャ。』

ハナの部屋の扉を閉めると、そこには不思議なくらい
いつもと変わらないリビングが広がって居て

俺達だけが、昨日とは違う。

そう思うと
遣る瀬無いような後悔が、俺の身体を器用に縛り上げて

その場に立ち尽くしたまま
………動く事さえ、出来ないでいた。