53話Ｄ ページ3
『…彼女を守りたい…。』
そんな風に、強く願った事が過去にもあった。
ずっと昔…
俺がまだ、ほんの子供で
…誰かを守ると言うには幼すぎた、あの頃。
非力な自分が悔しくて、悔しくて…
一晩中、布団に包まって
泣き明かした記憶。
何で今頃
あの頃の記憶が、蘇ったんだろう…？
ふふ…俺は、ツイてる…。
本当なら、頭を強打して、チーン…と
なってもおかしく無い状況だったよねっ？
どうやら…
俺達が倒れ込んだ先に
偶然居合わせた何人かのサラリーマンが
咄嗟に俺の身体を支えてくれたみたいだった。
はあ、本当に
ありがとうございます…
心から感謝します、カムサハムニダ。
それでもかなり強い衝撃を感じたし
彼女の下敷きで、しばらくは声も出ない…
ああ…肘が痛いっ、絶対に擦りむいた。
ああ…背中が痛いっ、絶対にアザ出来た。
ああ…彼女はいつまで…
…俺の上で寝転んでいるのかなww
心配気に俺達を覗き込んだ中年の女性が
彼女にそっと手を差し出して
優しく言葉をかけている。
その言葉に反応して、身体を起こそうと
…彼女は…
俺のみぞおちに
全体重をかけて、肘を立てた…。
いっ…
「痛っ…、痛ってぇ…。」
思わず俺の口から出た
その言葉に、ハッとしたような彼女の反応が…
その背中から伝わってくる。
…はは…ひょっとして
今頃、俺の上で寝転んでいた事に気がついたの？
君は、おっちょこちょいなんだな…。
…初めて出会った時の、酷く怯えた表情に
キッと俺を睨みつけた瞳…
不安に、驚き、子供みたいに泣きじゃくる姿。
さっきの…
今にも泣き出しそうな顔は、一体どうしてなの？
たった２回の出会いだけど
随分と俺は
君の色々な表情を知ってるみたいだ…
恐る恐る、振り返ろうとする君は
一体どんな顔で、俺を見つめるんだろう？
早く、振り返って…俺を見付けてよ。
あー…頭でも打ったかな？
俺は、完全にイカれちゃってるかもしれない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 57人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：うずら | 作成日時：2017年4月26日 14時
