61話Ｄ ページ11
『手、このままなの？』
そんな彼女の指摘に
俺は思わず繋いでいた手を引っ込めた。
Ｄ「ああ、ごめん…嫌だったよね？」
Ｙ「えっ…？私は全然…」
…私は…全然…？
何？何なの？その続きは？
…私は全然……
『貴方の事、意識してないから、平気ですよ！』
…私は全然……
『いいんだけど…彼氏が嫌がるから！』
…はっっ‼カ.レ.シ…彼氏っっ‼‼
そうだっ彼女には彼氏がいたんだっ！
前に言ってたじゃないかぁ〜…
はっ…はは…なんだ……失恋なの？
始まる前に終わってた訳か。
さっき見たばかりの
彼女の笑顔が頭を過る…
彼氏の前でも
君はあんな顔して笑ってるの？
愛おしそうに、その男を見つめる彼女…
ぐぅぅぅぅ…考えたくない…
自動再生中だった、俺の女々しい想像は
…彼女の声で、一旦停止した。
Ｙ「あの…全然、嫌とかじゃなくて…
これ、使って欲しくて…寒いでしょ？」
自分のカバンをゴソゴソしてた彼女が
俺の膝の上にフワリと
真っ赤なマフラーを優しく置いた。
「…暖ったかい…。」
膝に置かれた筈のマフラーが
また、どうゆう訳か…
俺の心を熱くしてしまう。
きっと、俺はもう
彼女の事…好きなんだろうな…。
一緒に過ごした時間なんて
もう、本当に僅か……でも…
こう言うのって…理屈じゃないって分かった。
あぁ…決めた、関係ないよ…彼氏とか
ただ俺は、俺の気持ちを
素直に伝えればいい…それだけの事だろ？
大きく深呼吸してから…
目を閉じて、彼女へ伝える言葉を探す。
また、いつ目の前から消えるか分からない…
そんな彼女に
この気持ちだけでも、伝えたい。
…よしっ男なら、告白は…一言。
えいっ言ってやるっ！
「…好きだっ‼」
…俺は昔から、好きな女の子に告白なんて…
正直、殆どしたことなんて無かった。
振られるのが、嫌だし
それなりに…まあ…
女の子の方から告白されてきたし。
俺の…
一世一代の、愛の告白…だった。
…なのに
閉じていた目を
ゆっくり開けてみると…そこには
俺の告白に、ポカンと口を開けて
「…俺もだ、テソン。」
と、答えるタッピョンの姿しか無かった。
…膝の上には…
彼女が置いてくれた形のままで
赤いマフラーが、ポツンと乗っかってた。
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作者名：うずら | 作成日時：2017年4月26日 14時
