【Fischer's】いちごみるく

三十五。なんでなんでなんで。 由良視点 ページ38

…クソ




なんでなんでなんで。




あんな生意気な小娘の、どこがいいっていうの？




私は努力してきたのよ




あんな奴とは違う




『もっと苦しませてあげるわ、だって私の遊び道具だもの…！！』




私よりも可愛い人なんかいない




私よりも努力を積み重ねた人はいない




私よりも、私よりも、私よりも、私よりも……




「顔が台無しだぞ」




ビクッと体を震わせる。




この声は…




『ダーマ…さ、ん』




「何が楽しくて、こんな事してんのかはしらねぇけどよ」




「これ以上、あいつを壊すようなことはやめろ」




……どうして？




『なんで？！生意気なくせに、何でこうも好かれるの？！あいつなんか滅びちゃえばいいのにっ！！』




意味がわからない




あいつが好かれる理由は何？




あいつを庇う理由は何？




「…お前」




やけに低いトーンの声。




『何よ？！あぁ、お説教なら聞き飽きてるわ！！私はアイツを潰す事しか―』




「ふざけたこと抜かしてんじゃねぇよ」




グッと、胸倉を掴まれた。




「生意気だと？滅びろだと？アイツが過去にどんな思いをしてきたかも知らねぇくせに」




『そ、それならっ…知ってるわ！！姉が人殺し―』




「それ以上、声を出したらぶっ殺す」




恐怖を通り越した、こいつの声色。




こんな奴に怯えてたくないのに




体は、一向に動かなかった




「てめぇみたいな奴に、あいつの事を言う資格はねぇ。出てけ」




ドンっと突き飛ばされ、私は尻餅をついた。




『…何なのよ』




悔しいはずなのに、いつもの声が出ない




確かに、あいつのことは何も知らない




どれだけ努力をしたかも、どんな辛い思いをしたのかも……




あれ？




私って―




「お前は何も知らない」




こんなにも、無力だったっけ。




『…そ、うね』




納得するしかなかった




何故なら、それが答えだったから




『…出てって』




私がそう言うと、あいつは素直に出て行った。






いつも、あいつを嘲笑う私には






もう、何もない

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