Again (ページ11)

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〖樹〗

次日の朝。
目が覚めると、身に覚えのない医師が立っていて、
何事かと思い、内心かなり焦った。

『えーっと……』

一声上げると、此方が起きた事に気付いたのか、

「あっ、突然押し掛けてすみません。
私、Aさんの担当医をしております、菅野と言います。
田中さんにお話があって参りました。
別室で詳細を話しますので、10時になりましたら面会室へ
お越しください。」

『あ、分かりました……。』

「では、失礼しますね。」

事が済んだのか、さらりと部屋から出て行ってしまった。
にしても、菅野先生はとても優しく、朗らかな、
そんな印象を持つ医師だと思った。
その性格や仕草はAのようで、少し胸が苦しくなった。

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予定時間に面会室に入れば、重々しい空気感。
その重圧に負けそうになるが、
全てを受け入れる覚悟で椅子を引いた。

「では、始めさせていただきますね。
先ず、現時点のAさんの容態ですが…単刀直入に
言って、非常に危険な状態です。
搬送当時と比較するとだいぶ安定しましたが、
かなりの重症である事に変わりはありません。
御手元の資料を見て分かるかとは思いますが………」

事細かに説明されたはいいけど、
俺自身の心が、頭が、この出来事に追いつかない。

仕舞いには、

「現在、ICUで集中治療を継続していますが、
いつ急変してもおかしくありません。」

なんて言われたし。

俺は何をするのが正解？
Aの傍に居てやればいいのか、
将又、居ない方がいいのか。

そう考え込んでいれば、

「あの、大丈夫ですか？
いきなり押し掛けた上に重々しい話、いくら何でも
気が重くなりますよね……。申し訳ないです。」

と、気を遣わせてしまった。

『いえ。此方こそ、貴重なお時間にお話していただけて
有難く思います。
そんなにお気になさらないでください。
先生が明るくなきゃ、俺らまで暗くなりますから。』

俺はどれだけ先生の笑顔と明るさに励まされた事か。
暗い顔をされては、俺ら患者まで気が滅入りそうだから、
先生は先生のままで、明るいままでいてくださいよ、なんて
思ったりして。

少し明るさを取り戻した俺は、暫く開いていなかったスマホを開き、大学の友人らに連絡しようと思った。

でも、やめた。

だって……"余計な心配を掛ける訳にはいかない"から。