99 蛇に睨まれた蛙 ページ8
櫻井side
「ははは、君は中々頭が良いようだね。」
「……いや、でもなぜ？」
「Aに少し時間をやらなければ……と思ってね。
正直に言うとね
事故にあって記憶も未だ戻っていないAに君との結婚はまだ早いのではないかと私は思っているのだよ。」
「いやっ確かにAさんはまだ記憶が戻っていませんが私がそこは確り支えていきますっ！」
会長の否定的な発言に思わず反論する。
「……櫻井君、なぜ君はそんなに結婚を急ぐのかい？」
「……それは…。」
俺が言い淀んでいると会長は
「Aにとってみれば、急に知らない人に
この人は両親だ、この人は婚約者だ、と言われているようなものだろう？
こちらの都合で結婚は予定通りとはいかないのでは？」
「会長のおっしゃっていることは重々理解しています。
ですから、Aさんと私は事故前より密に時間を共有し、コミュニケーションをとってきたのです。
Aもこのことは十分理解しているはずです。」
「ではなぜAは私たち両親に君と『別れた』と言ったのだろう？」
「それは誤解だったのです。
確かに私はAさんに一時的にでも哀しい思いをさせてしまいました。
会長と奥様にも心配させてしまって……申訳なく思っています。
少しの気持ちのすれ違いでAさんは感情的に別れを口にしてしまっただけで
そのことで私たちの関係が終わってしまうようなことはありません！」
俺が一気に言い終えたところで会長が小さくため息をついた。
「……では、どうだろう？
私に少し時間をくれないかな？
私もね、今まで仕事にかまけてAとの時間を十分取ってあげられなかった。
君に嫁ぐ前にAがどんなことを考え、何をしたいのか、今さらながらだが知りたいし。父子水入らずの時間も持ちたいと思っていてね。」
「それは構いませんが……。」
「それとね……櫻井君。
君は私たちやAに、まだ話していないことがあるようだ。
そのことがうやむやのままではAとの結婚は許すわけにはいかない。
私が言っている意味を『賢い櫻井君』ならわかるだろう？
君にとっても今時間を置くことは必要だ。」
今までの穏やかな雰囲気と打って変わって
突き放すような強さで話す会長に凍りつく
蛇に睨まれた蛙であるかのように。
会長は全て知っている。
俺が隠してきたことを。
そして俺は会長の提案を受け入れるしかなかった。
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ゆいねごと(プロフ) - sky57421970さん» コメントありがとうございます！読んで下さってる方の感想をきく機会がなかなかありませんので、とても嬉しいです。更新スピードは遅くて心苦しいですが、より楽しんで頂けるよう頑張ります！ (2019年2月23日 22時) (
レス) id: 2da354f69e (このIDを非表示/違反報告)
sky57421970(プロフ) - 初めまして。更新されるのを楽しみに待ってます。物語の展開が色々と変わるのでわくわくしながら読ませていただいています。これからも応援しています。 (2019年2月23日 6時) (レス) id: 19356e08eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やわらかなあたま | 作成日時：2018年9月14日 11時
