126 終止符 ページ35
誰もいない病院のロビー
日中は多くの人が行き交うであろう広々としたその空間は、夜も更けた今は灯りも落とされていて薄暗い。
待合用の長椅子に二人離れて座る。
時間をくれ、と言われた以上
私から声をかけることは憚られ
でもだからと言って櫻井さんは
私から1メートル離れた先で黙ったまま。
「お母様のこと……大変でしたね。」
いたたまれず私から声を出す
なんとなく櫻井さんの顔を見れず、前を向いたまま呟くように。
「でも、手術も成功しましたし、後はゆっくり療養し──「滑稽だろ？」
「え？」
櫻井さんの言葉に思わず顔を見つめる
さっき私を呼び止めた真っ直ぐな目とは打って変わって
まるで他人事のように嘲るような笑みを浮かべている
「お前の婚約者の母親は薄給のパート清掃員なんだぜ(笑)
天下Aグループの令嬢の婚約者は、実は親は死んだとウソついた上、独立するといってその有り余る経済力を調子よく利用してたってワケ。
しっかしお前も馬鹿だよな(笑)
惚れた弱みなんだか知らねぇけど
目をハートにして、すっかり騙されて。
あ、もういーから。
お前の望み通り婚約破棄ってことで。
何？そんな人を哀れむような顔して？
母親がこんなことになって
どうせ心の中じゃ、因果応報って思ってんだろ？」
「そ、そんなことはっ──「無理なんだよっ！」
声を荒げた櫻井さんにビクッと反応して言葉が止まる。
「お前のその、純粋で汚いものなど見たことないっていう目が──俺にはもう無理。」
壊れてしまいそうな表情した刹那
それを隠すかのように
すくっと立ち上がった櫻井さんは
「もう、会うこともないから──」
と私に背を向けたままそう呟き、歩き出す。
──今まで騙してて……すまない──
かすかに聞こえた櫻井さんの声は
私の気のせいだった？
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ゆいねごと(プロフ) - sky57421970さん» コメントありがとうございます！読んで下さってる方の感想をきく機会がなかなかありませんので、とても嬉しいです。更新スピードは遅くて心苦しいですが、より楽しんで頂けるよう頑張ります！ (2019年2月23日 22時) (
レス) id: 2da354f69e (このIDを非表示/違反報告)
sky57421970(プロフ) - 初めまして。更新されるのを楽しみに待ってます。物語の展開が色々と変わるのでわくわくしながら読ませていただいています。これからも応援しています。 (2019年2月23日 6時) (レス) id: 19356e08eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やわらかなあたま | 作成日時：2018年9月14日 11時
