125 兄 ページ34
「お兄ちゃん、お母さん今手術してる。
お母さん大丈夫かな……？」
「大丈夫に決まっているだろう。」
不安がる妹を兄が落ち着かせるように、頭を優しく撫でている。
その二人のやり取りを呆然と眺める
本来なら待っていた兄の登場に私は安堵するはずなのに
今、目の前の光景は夢かと信じがたく感じた。
妹の話を聞きながら
その『お兄ちゃん』がふとこちらに気付いて目を見開く
きっと私と同じように驚いているのだろう
まるでそこだけ時が止まってしまったかのように
目が合ったままお互い微動だにしない
「あ、お兄さんいらっしゃったんですね。」
マスターに電話していた相葉君が戻ってきて
話しかけると
「はい、こちら兄の櫻井翔です。」
と妹さんが紹介した。
「相葉雅紀です。あと同級生のAAさんです。」
と相葉君が私を見ながら紹介してくれる
私はそれにどう応えて良いか分からず
ただペコリとお辞儀をした。
私を見て驚いた表情をしていた櫻井さんはすぐに何もなかったかのように
「この度は母がお世話になりありがとうございました。」
目の前にいる相葉君に御礼を言った。
その時に手術室から看護師さんが出て来て手術が終わったことを告げられた。
集中治療室へ運ばれていくミチエさんを見送って
「じゃあ、僕らはこれで失礼します。」
と相葉君の言葉に
私も一礼してこの場を後にする。
「……帰るの遅くなっちゃったね。送っていくよ。」
「ううん、まだ電車もある時間帯だし大丈夫だよ。」
優しい心遣いをしてくれる相葉君だけど、やはり疲れているか、その声には元気がなかった。
交わす言葉もなく病院の外へと向かう。
「──あのっ！」
突然後ろから声がした。
振り返るとそこにいたのは
櫻井さんで
私の顔を真っ直ぐ見つめ
「AAさん、少しの時間を僕にください。」
そう告げられた。
ただならぬ雰囲気に相葉君も何かを察したのか
「じゃあAちゃん、俺、外で待ってようか？それとも……」
「うん、先に帰ってて大丈夫だよ。」
言い淀んだ相葉君の言葉を汲み取り、私から伝えた。
「……わかった。───じゃあね。」
そう言って相葉君は帰って行った。
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ゆいねごと(プロフ) - sky57421970さん» コメントありがとうございます！読んで下さってる方の感想をきく機会がなかなかありませんので、とても嬉しいです。更新スピードは遅くて心苦しいですが、より楽しんで頂けるよう頑張ります！ (2019年2月23日 22時) (
レス) id: 2da354f69e (このIDを非表示/違反報告)
sky57421970(プロフ) - 初めまして。更新されるのを楽しみに待ってます。物語の展開が色々と変わるのでわくわくしながら読ませていただいています。これからも応援しています。 (2019年2月23日 6時) (レス) id: 19356e08eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やわらかなあたま | 作成日時：2018年9月14日 11時
