本当の恋人～ars parallel world～ (ページ43)

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43 『みそラーメン』ページ43

色んなことがありすぎた一日

でも今この瞬間は

何故かラーメンをすすっていて

隣にいるのはカズさんで。

急に怒り出した私にびっくりしただろう大野先生に

悪いことしちゃったなとか

櫻井さんにも何か事情があるのかな

なんて

おなかが満たされてきたからか

やっと冷静に考えられるようになってきた。

「事故前の『私』と櫻井さんって……
どんなお付き合いしてたんでしょうか？」

隣に座っていて対面しないでいるからか

それは独り言のように

気張らずに口に出た。

「そりゃ、もう……ラブラブだろ(笑)。」

「……そうなんですか。」

もしかしたら櫻井さんは

事故後の私が以前の『私』と違い過ぎて

嫌になってしまったのかも。

病院で目覚めた時に確か櫻井さん

『別人みたいで調子狂うな。』

って言ってたし。

多分そう

絶対そうだ。

「……フフッ……。」

ラーメンの麺を口に入れる直前で止めて

それをまた器に戻したカズさんが

急に笑う。

「事故前のお前。よく深夜に『ラーメン食べたい』って、オレよくここに呼び出されてたわ。

で、いっつもお前『みそラーメン』頼むのよ。

この店ってさ、魚介スープのしおラーメンで人気の店なワケ。

ここに来てなんでわざわざ『みそ』なんだって(笑)

事故前も後もおんなじもん頼んでるの見て、
記憶なくても根っこのとこは変わんねーなって思ってさ(笑)。」

「それはたまたま……。それにこのお店がしおラーメンが有名なんて知らなかっ━━

「ずる、ずずーっ。」

まるで、私が呟いた言い訳を遮るかのように

カズさんはラーメンをすすって

モグモグしながら

「翔さんはさ、Aのそういうとこ、知ってたのかな？」

確認するように私のことを一瞬チラッとみて、またラーメンをすする

「まあ、逆に？
オレが知らなくて翔さんだけに見せてるAの顔もあるだろーし？

自分の中でも色んな『自分』がいるワケよ。

なんか記憶なくなってお前だけじゃなくて━━周りの、、オレや翔さんだって戸惑っているのは確かだけどさ、

急に前のお前に寄せてくこともしなくていーんじゃね？

……て、オレが言うことでもねーか(笑)。」

カズさんの話をきいて

箸が止まっている私を

「麺が伸びる、早く食えよ。」

と嗜めて

カズさんはまた小さく笑った。