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「そんなん…安室さんは格好良いし、優しいし、なんでも出来はるし。…誰でも好きになってしまいます」
…随分と買い被られているものだな。
「なんで、わたしなんですか。
安室さんに似合うような人じゃないのに」
どうやら彼女は自己肯定感は並にあるが、自己評価はそう高くないらしい。
充分すぎるほど長所があるのに、気付いていないか、ただそこに興味がないのか。
なんにせよ、きっとまだどこかで誰にでもこういう態度をとっていると思われているのだろう。…ポアロでの姿を見られているので自業自得ではあるのだが。
(でも、それじゃ困るんだよな)
「つまりは、まだいまいち信用できないってことですよね?
…でも、これだけはお伝えしておきたいんですけど。さすがに誰にでも言うほど僕は軽い男じゃありませんよ」
そう言うと、ハッとした表情で黙り込んでしまった。
そのまま様子を窺っていると、困ったような顔をしたり、少し顔が赤くなったり。
頭の中がなんとなく分かってしまうような、
コロコロと変わる正直な表情に、思わず笑みがこぼれる。
――そう、彼女のこういう所だ。
普段ハニートラップを仕掛けていると、こういう展開なら二つ返事でOKする奴ばかり目にしてきた。
こんな反応は本当に新鮮で、余計愛おしい。
(気になっている、なんて遠回しな表現はもう必要ないな)
仮定は確信に変わる。
秋乃さんが、好きなのだと。
柄にもなく、自身の気持ちを認識するまで時間がかかったことに笑ってしまう。
彼女は数多利用している人物の一人。
――そのはず、だったのに。
(人に恋をするなんて、久しぶりだ)
瞳に映っているのが"安室透"であれ、考えても仕方ないことだ。
それに、正体を告げたとしても彼女なら大丈夫なのではないか。そんな妙な安心感があった。
「――秋乃さん、やっぱり訂正します。僕、あなたのことが好きみたいです」
まだ混乱しているのだろう、彼女の瞳は困惑に揺れていた。
そのままキスの一つでもしてやりたい気持ちをぐっと抑え。返事はいつでもいいと、落ち着かせるように伝えた。
「とりあえずっ、今日は失礼します!えと、上着ありがとうございました、おやすみなさい!」
ドアを開け律儀にお辞儀をして、慌てて走り去って行く。
――さて、気長に待つか。
あたたかさの残る上着を手に、後ろ姿を最後まで見送った。
・・・
安室さん視点ここまで。
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枝豆(プロフ) - ゆあななさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけると励みになります、頑張りますね! (2018年5月24日 12時) (レス) id: 12c730cb67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあなな(プロフ) - いやもうほんと、すごく面白いです!!頑張ってください!! (2018年5月23日 22時) (レス) id: 6443c029d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:枝豆 | 作成日時:2018年5月15日 12時