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彼女のことは、正直気になっている。
好きなのかと聞かれたならおそらくイエスだ。
――だが、
(だが、彼女が見ているのは"安室透"だ。
…"降谷零"でも同じように接してもらえるなんて保証、どこにもないのにな)
仕事上、女性の扱いには慣れている。どう言えば、どうすれば喜ぶのか、大抵把握しているしそれに対して別に興味もなかった。
しかし、彼女にだけは。
返ってくる反応に、表情に。平静を崩される自分がいる。
紅茶を淹れている時の真剣で、どこかわくわくしたような顔。
接客している時の、明るく生き生きとした顔。
それに少しからかうとすぐ赤くなる。
もっと色んな表情を見てみたい、そんな気持ちにさせられる。
夜景を見に行こうと誘ったのも半ば思いつきだった。
もちろん元気づけたかったという理由は嘘ではない。彼女が先日の一件で沈んでいるのは目に見えて分かっていたので、それも一因だ。
いつもの笑顔が戻ればいいと、
少しでも気が晴れればいいと思っていた。
外に降り立った彼女の瞳は、
ネオンや街明かりが映り込み、美しかった。
先ほど考えていた、連れてきた理由を簡単に話すと軽く息を飲むのが分かる。
予想通り、図星のようだ。
ぽつぽつ、あの時の心境を零していく彼女に、ひどいとは思ったが正論を返す。
さすがに顔を見ながらは気が引けたので、目線は合わせないまま。
そのあと、帰ってきたのは感謝の言葉だった。
深くお辞儀をしたまま動かないのを見兼ねて声をかけたが、一向に顔を上げない。
――いや、上げられないのだと気付いた。
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枝豆(プロフ) - ゆあななさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけると励みになります、頑張りますね! (2018年5月24日 12時) (レス) id: 12c730cb67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあなな(プロフ) - いやもうほんと、すごく面白いです!!頑張ってください!! (2018年5月23日 22時) (レス) id: 6443c029d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:枝豆 | 作成日時:2018年5月15日 12時