69 ページ21
せっかくなので新作の紅茶を飲んでもらおうと、応接室にご案内した。
茶葉を計りお湯を注ぐと一気に甘い香りが部屋に広がる。
最後まで砂時計が落ちきるのを見届けてから、彼の前にカップを置く。
「では、いただきます。
――！ …砂糖を入れると本当にアップルパイみたいだ。これはポアロのお客さまも喜びそうです」
「それなら良かった！わたしも今回のは個人的にもお気に入りなんです」
本当に気に入ってくれたのか、あっという間にカップは空になった。
「ていうか、連絡くださればこちらから伺いますのに…」
「いえいえ！気にしないでください。
せっかくなのでお店の物いろいろ見てみたいですし。…それに、」
そこで じっ、と１秒。静かに目が合う。
「秋乃さんの仕事してる姿。素敵なので」
「――！！」
かああ、と顔が熱くなるのが分かる。
不意打ちすぎる言葉に、頭が真っ白だ。
「あ、ありがとう、ございます…。わたしも安室さんの仕事姿、素敵やと思いますよ」
なんとかそれだけを返すと、それは嬉しいな！と笑った。
(安室さんはこういう人やって分かってるけど……けど、慣れへん…！)
「もう、安室さんはすぐそういうこと言う…。こういうのあんまりポンポン女性に言うたらあかんのですよ」
ちょっとした抗議のつもりで彼の肩をつつく。
むしろこれに耐えられるって、ポアロの常連女性さんたちの心臓すごいな…
「やだなあ、さすがに誰彼構わずこんなこと言いませんよ」
少し困ったように、しかしすぐにいつもの柔らかい笑みに戻り。
「いつも一生懸命で、紅茶が好きだってことが伝わってきますから。
――本当に、素敵だと思ってますよ」
当のわたしは先ほどから頭がいっぱいいっぱいで、なんと返事をするべきか迷っていた。
安室さんはというと特に返事を聞くつもりもない素振りで、
マスターにお茶をお届けしたいですしそろそろお暇しましょうかねえ、とのんびり言った。
「…あ、それなら新しいお茶取ってきます！少々お待ち下さい、」
赤い顔をあまり見られたくなくて、この場から逃げるように応接室から出た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 98人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
枝豆(プロフ) - ゆあななさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると励みになります、頑張りますね！ (2018年5月24日 12時) (
レス) id: 12c730cb67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあなな(プロフ) - いやもうほんと、すごく面白いです！！頑張ってください！！ (2018年5月23日 22時) (レス) id: 6443c029d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：枝豆 | 作成日時：2018年5月15日 12時
