マレウス・ドラコニアの右腕候補生 (ページ12)

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手合わせページ12

セベクの賛美(超大声)で顔を赤くした後、ディアソムニア寮へと戻る。初日だけ午後が丸々フリー

タイムになったため、セベクとの手合わせも繰り上げられた。ＮＲＣ仕様の運動着はまだ慣れない

が、郷に入っては郷に従えということで袖を通す。いつも通り１０歩離れた先で準備運動をするセベ

クに声を掛けた。

「審判役のリリア様がいないからこうしよう。魔法は一切禁止。どっちかが身動き不可、もしくは降参したら終わり。丁度２時前だからあの大時計が２時になったらスタート。いい？セベク」

「いいだろう。」

「じゃあ２時になったら開始で。」

大時計が２時まで３０秒を切る。束の間の中立の時間はすぐに崩れるだろう。僕はセベク相手に力で

勝てない。小柄さと素早さを活かして撹乱、からの渾身の一撃。これが勝ちパターンだ。だとすれば

「先手必勝」

大時計が２時を告げた瞬間、セベクに向かって一直線に接近する。もちろん迎え撃つつもりのセベ

ク。姿勢を低くして僕を凝視する。『いつ来る、さあ来い』。そんな感じだろう。だが、真正面から

戦っても僕が勝てないのはセベクも織り込み済み。何か手があるはずだ。だけどこれで行く。

セベクの腕がギリギリ届く距離に入った瞬間、僕は体を思い切り捻った。走った分の惰性で体は予想

通り右の方に逸れる。ここからだ。

「よっと！」

セベクの反射神経も伊達じゃない。僕の切り返しにすぐついて来て掴みかかろうとしてくる。でもそ

うはいかない。セベクと僕の決定的な差。それは身長。だからこそ引きつけた。セベクの姿勢が低く

なるように。前のめりになったセベクに向かって大きく跳ぶ。低くなった背中は最早怖いものではな

く、簡単に飛び越えることができた。

「な⁉」

「遅い！」

地面に着地するなりセベクの方へ体をもう一度切り返す。無防備になった背中の上の方を狙って飛び

つき、地面にうつぶせにさせた。こうなれば僕の力でも拘束できる。倒れたセベクの背中に両腕を回

し、手首で固定する。

「勝った！」

「ぐっ……」

リリア様に教わった人の体にあるツボ。最低限の力で相手の動きを封じることができる場所を的確に

押さえ、セベクを抑える。

「降参？」

「本当の刺客だったら拘束された時点で殺される。僕の負けだ。」

「おっしゃあ！」

「だが次は負けんぞ！」

「もちろん！」