マレウス・ドラコニアの右腕候補生 (ページ2)

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右腕候補生ページ2

「うわあ！アチチ！尻に火が！」

「このままでは学園が火の海です！誰かあの狸を捕まえてください！」

熱気に満ちた鏡の間で新入生どころかこの場にいる全員が慌てふためく。あの赤い目の人の火は消さ

なくて大丈夫だろうか。二人の寮長が猫を追いかけるのを横目に席から立ち上がる。そして式典服を

今にも燃やし尽くしそうな炎の処理に追われる赤い目の人に近づいた。

「少し止まってください。ウォーターショット！」

支給されたばかりのマジカルペンを手に取って彼の上で燃える炎に向ける。魔法で作り出した水はみ

るみるうちに青い炎を消火した。

「誰か分からないけど、ありがとな！」

「いえ、当然のことです。」

よく見てみれば人の良さそうな柔らかい笑顔。この学園にそんな人がいるとは。焦げた上に濡れてし

まった式典服の裾を絞りつつ、彼は僕の顔を覗き込む。興味深そう、というよりは何か思い出そうと

するように彼は首をひねった。

「お前……オレとどこかで会ったか？」

「さあ。僕はそうは思いませんが。」

「そうか。なら忘れてくれ。」

「少々予定外のトラブルはありましたが、これにて入学式は閉会です。各寮長は新入生を連れて寮に戻ってください。」

彼を助けてうちに猫が捕まって摘まみ出されたようだ。寮長……そういえば肝心のマレウス様はどこ

にいらっしゃるのだろうか。

「……ん？そういえばディアソムニア寮、寮長のドラコニアくんの姿が見えないようですが……」

学園長も気づいたようだ。というか、最初からいらっしゃらなかったのだから気づくのが遅いくらい

である。

「あれ？もしかして誰も式のこと伝えてないのか？」

え？

「そんなに言うならアンタが伝えてやればよかったじゃない。」

「うーん。でもオレ、アイツのことあんま知らないんだよなー。」

「……そこは知らなくても伝えるのが筋では？」

「誰よアンタ。」

思わず話しかけると、やけに顔が整った男が聞く。

「レーヴェン・バイラルです。茨の谷の次期王であるマレウス・ドラコニア様の、右腕候補生でもあります。」

「右腕候補生？なんだそりゃ。」

さっき炎から助けた彼が首を傾げる。茨の谷独自の制度だからか認知度は低いようだ。

「右腕は王を傍らで支える役目です。まだ王になっていない跡継ぎ様が将来王になった時、右腕になる者を右腕候補生と言います。」