野坂くんと私の短編集【野坂悠馬】 (ページ18)

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18.甘い君への塩加減【りかい不能】ページ18

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『……ちょっと何言ってるか分からないです』

そう吐き捨て彼の横を通り過ぎた。

そう、あの時からだった。

私が消えようとする度に現れては、難癖つけて邪魔をしてくる。

まぁ半分、というか殆ど正論なんですけど。

だから余計に腹が立つ。

私が公園で首を吊ろうとしていると「子供にトラウマを植え付けさせたいんですか？」と、

睡眠薬を大量に買おうと薬局へ行くと売り切れていて、横から彼の声が聞こえて振り向くと「困っている友達に贈るんだ」と彼はカゴいっぱい睡眠薬を入れ、半ば無茶苦茶なことを言った。

…他にも色々。

どうしていつも彼は私が消えようとした時に現れるのだろう。

「ぼーっとしてどうしたんですか？」

はっと我に返ると彼が私の横で川を見ていた。

『…はぁ』

「ため息は幸せが逃げていきますよ…なんて在り来りなこと言っていいですか？」

『…ほんと、貴方はなんなんですか。』

「…僕？それは、難しい質問ですね」

『…人間って言っとけばいいじゃないですか。捻くれている貴方なら。』

「！、嬉しいです。僕のことを理解してくれているんですか」

『…って私が聞きたいのはそんなことじゃないんですよ』

「ノリツッコミですね、甘いものを食べに行きましょう」

『…脈絡が無いですね。貴方と話すと疲れます』

「…

疲れるのは嫌ですか？」

『……。』

「嫌、じゃないんですね。食べに行きましょうよ」

『…一つだけ聞いていいですか？』

「質問に答えたら、食べに行ってくれます？」

『………いいでしょう。ですが、これっきりにしてください』

「でも、僕が止めないと貴方は消えてしまうんですよね。じゃあ嫌です」

『貴方ねぇ』

「聞きたいことって何ですか？僕の名前ですか、それとも歳ですか。スリーサイズなら…」

『冗談キツいです。それと、華麗にスルーしましたね、貴方のスルースキルには本当に悩まされます。』

「僕のことで悩んでくれるなんて…嬉しいです」

『貴方はその瞳に似合わず本当にポジティブですね』

こんなに悪態ついても彼は隣でニコニコ笑うだけだった。

『で、聞きたいことですが、

貴方はどうして何時もタイミング良く現れるんですか？』

もう一度聞くと、彼は珍しく黙る。

体制も横の彼に向け真剣にその目を射抜く。

「…どうしても知りたいんですね。

じゃあカフェに行きましょう」

またそれか、

私は真剣に聞いているのに。