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しばらくしてAが寝息をたてはじめた頃、さっきから保健室前にいる気配に「入ったら?」と声をかけた。
「さすが、伊作先輩ですね」
「今の君は忍者じゃないんだから、誰だって気付くよ。久々知」
遠慮がちに入り、寝ているAの顔を覗き込んだ久々知は小さく息をついた。
「やっぱり、寝てなかったんですねコイツ」
「立場が逆だったら久々知は寝れるかい?」
「…いえ、」
だから分かるんです、と久々知は懐かしい笑顔を見せた。
「久々知は、元の時代に帰りたくないの?」
そう聞くと「帰りたいです」と間を空けず久々知が答える。
「今は昔とは違う家族や大切な人が居ますから。…でも、生まれ変わってもずっと気掛かりだったんです、Aのこと」
あの日、敵に作戦がバレたという知らせを聞いた瞬間、浮かんだのはAの死。だけど俺は、俺達は忍者だからとその場に居た五年生は自分の感情を殺してAを見捨てることにした。それは任務をする上で暗黙の了解だったから。
だけど、自分だけは違った。どうしても、Aを見捨てることは出来なかった。結局、自分の命と引き換えにAを助けた。死ぬ者よりも、残された者の方が苦しむと知りながら。
「そのことを、ずっと謝りたかったんです。だからきっとここに来たんですよね。」
そう言ってAを見つめる久々知に「きっとAはそれを望んでないよ」という言葉は言えなかった。
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神野シュウ(プロフ) - 面白いです!続き、楽しみにしてます!!頑張ってくださいo(`^´*) (2012年6月10日 7時) (携帯から) (レス) id: 4ec220c390 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はとほ | 作成日時:2012年6月4日 21時