甘い痛みを F �� ページ20
**F
時折やってくる頭痛とは、結構つき合いが長い。
今日の仕事は時間が読めず、薬を飲むタイミングを逃してしまった。
振り確認の時には随分酷くなっていて…
顔には出さないようにしたつもりだ。
が、北山が俺をチラリと見、「ちょっと一旦座ろうか」と皆に提案した。
調子が悪い時触れずに放っておいてほしい俺の性格を
…北山はまだ覚えてくれている。
皆に気付かれぬよう振舞っていたけれど
上着を着せてくれようとしたタマの温もりをふわっと感じた時、ふと心が緩み…
ほんの一瞬、その腕に寄りかかってしまいそうになった。
控室の隅のソファーで本を開き俯く。
もちろん字なんて追えない。しだいに強くなる痛みと、それに伴う吐き気に参ってしまう。
ふいに隣へ腰をおろしたタマ。
「俺が放っておくと思ったの」
ただ持っていただけの本を取り上げ、俺の身体を自分の腕にもたれさせた。
「目瞑って…大丈夫だから」
その安心感。
痛みはまだ止まない。
だけど恋人の匂いと腕の温もりに包まれていると、何もかも預けることを許される気がして…
《具合が悪い時は放っておいてほしい》という俺の性格は
例外もあるのだと気づく。
「恋人が心配な時は、部屋まで送り届けるものなの」
そう笑い、自分だって疲れているはずなのに送ってくれたタマ。
風呂から出て落ちついた俺を確認すると、コートを手に取った。
「え、タマ帰るの」
現金なもので、薬が効き具合が良くなってくると
帰ろうとする恋人がつい寂しくなってしまう。
「今夜はゆっくり休みなよ。
それからもう具合が悪い時隠したりしないこと。
なんでも言い合えるほうが嬉しいんだ。
そんな関係でいたい。…俺はね」
優しく微笑んだタマに、胸がきゅっとなる。
以前の俺は弱みをさらけ出すのも、甘やかされるのも嫌だった。
あの頃の恋人はそんな俺のことをよくわかってくれていたんだ。
今まで思い込んでいた自分の性格が、少しずつ変化していく。
ほんの少し…甘い痛みを伴って。
「じゃあ帰るわ。
あ、ちゃんと鍵かけなよ。じゃないと…」
玄関先、俺の顔をそっと撫でるタマ。
「また俺、戻ってきちゃいそうになるから。
弱ってる魅力的なガヤ襲いに」
思わず赤面することをサラッと言い
甘すぎる薬…をひとつ、俺の唇に与え帰っていった。
ねえタマ。
次はもう少し正直に言えるのかな。
『1錠じゃ足りない、帰るなよ』…って。
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とも(プロフ) - こんにちは！リクエスト大丈夫ですか？ (2017年8月11日 13時) (
レス) id: 6b1b9c2bb0 (このIDを非表示/違反報告)
もふ(プロフ) - Kyamさん» ありがとうございます。そう言っていただけるとコソコソ書いた甲斐があります(笑) 本当に7人全員が可愛くて、この子だったらどう動くかしらと勝手に妄想するのが楽しいんですよ。よかったらこれからもコソコソ更新におつきあい下さいませ♪ (2017年8月7日 0時) (レス) id: 7096c68f9a (このIDを非表示/違反報告)
Kyam(プロフ) - キュンと優しさで溢れるもふさんのお話大好きでいつもほっこり癒されています(*´`)こちらこそコソコソ読ませて頂いておりますが笑、これからも更新楽しみにしています！ (2017年8月5日 12時) (レス) id: db906d4599 (このIDを非表示/違反報告)
もふ(プロフ) - たいちゃんらぶさん» 我ながら随分なこじつけだなーとの自覚はあります(笑) Fさんは本来は感受性豊かなコだと思うし、メンバーはそれを知ってくれてると思うんですよね。ただ「織姫」ワードは自分でも書いてて照れました…今後ともぜひよろしくお願いします♪ (2017年8月4日 12時) (レス) id: 7096c68f9a (このIDを非表示/違反報告)
たいちゃんらぶ(プロフ) - たまりません♪たいぴの涙をみた宮っちの語りも良いし･･千ちゃんのﾋﾟｭｱさはいつでも癒され･･羨ましいって言うたいぴにｷｭﾝと切なくなりました♪俺の織姫←ひぃぃ･･( ;∀;)って悶えました♪これからも楽しみにしてますっ (2017年8月2日 21時) (レス) id: eaab40e8e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もふ
| 作成日時：2017年1月8日 0時
