米花町の視える子。【名探偵コナン×呪術廻戦】

１７. ページ19

『女の子を困らせちゃダメだよ、乙骨くん』

「…！？」


そこには、掃除用の箒を手に持った瀬川の姿があった。穂先の部分をへし折り棒術のように巧みに扱う。先生に箒壊しましたって謝らなきゃ…と呟いた瀬川だが、今はそんな場合ではない

「せ、瀬川さんなんで…！？」

『話は後！くるよ！！』


襲いかかる呪霊達を次々に祓う。無駄のない動き、そして何より呪力が増している。先程感じ取った気配はこの子のものだったのかと遅れて気づいた



『(乙骨憂太……どこかで聞いた事ある名前だと思ったら…)』


───現世に戻ってくる前の記憶を、少し思い出したそうな




ーーー


ーー


ー




「里香は、憂太のところに戻らなきゃいけないの。お願いお姉さん。私を帰して」


上も下も、右も左も真っ白な場所。どこまでも白い"無"の世界。小学生と高校生、2人の少女しか見当たらない。
今にも泣きそうな少女を前に罪悪感を覚えたのか、黒い制服の高校生は頭を悩ませる



『そうは言ってもね里香ちゃん……ここは知っての通り"あの世"なんだよ。この先を進めばもう現世には戻って来れない。でも私達は行かなきゃいけない

分かるかな？死んだ人間が、生きている人間に干渉しちゃダメなんだよ。私だってそれが出来たら……どんなに嬉しいか』


表情が曇る。誰もが望んで死んだ訳でもない。未練を残したままの人間など幾らでもいるはずだ。その中でこの子だけが特別など……あってはならない事。


「でも！憂太に呼ばれてるの。憂太にはまだ里香がついてなきゃダメなの！」

『あのね里香ちゃん、私だって皆だって帰りたいんだよ。でも死んだらそこで終わりなのよ。もう戻る事は出来ない……』

「…っ」


下唇を噛み締め"だって"、"でも憂太は"、と小さく聞こえる。スカートの端をギュッと握り涙を浮かべる少女を前に………彼女も鬼にはなれなかった

深く深く溜息をついて、少女と目線が合うようにしゃがむ


『……今来た道を覚えてる？引き返したら元の世界に帰れるよ。ちゃんと戻れるかどうかは保証出来ないけど』

「！」

『ほら、早くいっておいで。私から上手く伝えておくからさ』


気持ちは痛い程分かる。それにこの子は、死んでも死にきれない"何か"がある。


「ありがとう！！お姉さん！」




憂太のことは、里香が守るね！

涙を拭い嬉しそうに笑うと、少女はまた元きた道を引き返していったのだ

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