米花町の視える子。【名探偵コナン×呪術廻戦】

１５. ページ17

「い、いい？瀬川さん……身の危険を感じたらすぐ逃げるんだよ。僕の事は構わずに。分かった？」

『………うん』




この人で、大丈夫なのかな。

全く同じやり取りを、かれこれ五回目。本当に呪術師かと心配するほど怯弱な性格である。でも、それとは反する呪力の大きさ。弱々しいが強いなんて変な話…この乙骨憂太の存在自体がバグみたいだ


「て、て！繋ごっか！！迷ってはぐれちゃうといけないし！」

『…大丈夫だよ。私ここの生徒だから』

「そっか！確かに」


それに嫉妬深い霊が憑いてるみたいだし…という言葉は飲み込んだ。ただ不思議と、その霊は瀬川への敵対心は無い。
薄暗い廊下を並んで歩く。緊張気味の乙骨を横目に、ふと気になったことを聞いてみた



『……お兄さんって呪術師だよね？』

「え！？！？なんでそれ知って…！」

『制服見たら分かるよ、大丈夫。口は固いから誰にも言わない。お兄さんはなんで呪術師になろうと思ったの？』

「……えーっと…」



実力は確かなのに、自分の強さに驕り高ぶらずどちらかと言えば臆病な青年。瀬川にとって初めて見るパターンであった。そんな彼がどうして呪術師を目指すのか……

これ、言っちゃってもいいのかな。乙骨がそう呟いた後静かに語り始める



「……僕、とても大きな呪いに取り憑かれてて…僕に関わる人達が皆酷い目にあって」

『…うん』

「…だから、消えてしまいたいと思ってたんだ。誰も傷付けたくない。誰とも関わりたくないって。だからずっと閉じこもってて

……でもね、ある先生や友達の言葉で気付かされたんだ。本当は僕も誰かと関わりたい、誰かの為に生きてていいって自信が欲しい。呪術師になって多くの人達を救えば……僕もきっと前を向いて生きていけるって」

『……』


つまり自己肯定がこの青年に足りないもの。呪いのせいで皆に迷惑を掛けてしまう…そう思っていた。その教師や友人に出会って無ければ、今も彼は………

そう考えると、良い人に巡り会えたものだ。まだ世の中は捨てたもんじゃない


「ご、ごめんねこんな暗い話……なんでかなぁ…君相手だと、不思議と話せちゃうんだ」

『…大丈夫だよ。その先生やお友達ってどんな人？』

「とにかく、とっても強いんだ！特に先生は凄くて……時々ふざけたり適当だったりするけど、僕を救ってくれた恩師だよ。五条先生って言うんだけどね──」

『…！』

１６.→←１４.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す