懐かしい面＿＿陸 ページ5
蹲って動けなくなった私が、不意に宙に浮いた──腹に少し小さいが、筋肉質な腕が回された。
若干の衝撃が私を襲い、それからゆっくりと降ろされる。
「大丈夫か」
『……せ、めて。添え木、持ってきて、くれ』
絶え絶えに頼む私に、中也は手頃な枝を持ってきて、私の折れた左腕に自分の黒
サンキュ、と掠れた震える声で云った。莫迦野郎、と中也は云ったものの、無言で肩を貸してくれた。
「おい、太宰！」
中也が私に肩を貸しながら叫んだ。太宰の笑い声が聞こえ、如何やらそれ程重症ではないらしいと思う。
が、そう思ったのも束の間、太宰はゲホッと咳き込んだ。口許を拭った手には、新しい血がついている。内臓の何処か、それか食道が傷ついたのだ。
「手前……深手じゃねえか」
「あの触手……実に不思議だ。異能無効化が通じない」
『あり得んのか？』
訊きつつ、私はそんな訳が無いと否定する。異能は必ず、その条件に沿って発動する。
それに例外などは無い。それではこの世界を根本から覆してしまう。
まあ、それらが指し示すのはつまり──
「あれは異能じゃないんだ」
「はァ……!?」
『寧ろ自我がありそうな分��助かった��と云うべきかもな。あんな化け物、欧州の時計塔のトコぐらいしか対抗できる奴いねえだろ』
私達を除き、な。
そう呟いた私に、愉快な冗談だなァと中也が感嘆を漏らす。愉快すぎて
『取り敢えず、私の右肩治してくれよ』
「折れてねェのか？」
『どうやら脱臼みたいだ』
今から？ と太宰が目を見張った。今すぐに決まってんだろ。私今両腕が使えなくなってんだぞ。
ちなみに、脱臼を治す時医療機器も何もない場所で医者が行わない場合、想像を絶する痛みが生じる。勿論全部知ってて治せと云ってるのだ。
『早くしろ』
「文句云うなよ」
判ってる、と云おうとした瞬間──目の前が夜中だというのに真っ白に瞬いた。
『あ、がっ……！』
呻き声を一瞬上げ──耐えた。痛みが熱となってまだ余波を残しているが、動く。
その事実だけあれば十分だ。
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白夜の世界(プロフ) - 蒼い鈴さん» コメントありがとう御座います！励みになります、更新速度を一定に保ちつつ頑張ります……。 (2020年3月5日 20時) (
レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
蒼い鈴(プロフ) - 初コメ失礼します！とても面白い作品で、とても楽しく読めました！これからも頑張りすぎず頑張って下さい！ (2020年3月5日 20時) (レス) id: e9945970e1 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 新旧双黒オタク野郎さん» 番外編！！ですねえ、御免なさい、完璧に此方の事情になるのですが、自分は他にも連載中の小説がありそれらと同時並行、というのは流石に厳しいのです……、申し訳ありません。 (2020年2月29日 15時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
新旧双黒オタク野郎 - 番外編をお願いです！！ (2020年2月29日 8時) (レス) id: cab53c1a34 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白夜の世界
| 作成日時：2020年1月30日 17時
