moonlight2 (ページ11)

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ひっかいた猫の姿はもう見えなくなっていて
私の手首には血がにじんでいた

「どうした！？大丈夫？」

センター長が駆け寄ってくる

『大丈夫ですこれくらい...』
「こっちきて」

体の後ろに隠そうとした手をぐっとつかまれ
手を引かれて事務室の応接室のソファへ私を座らせると
センター長は救急箱を持って来て私の隣に座った

細くて長くて冷たい指が私の手首をまた掴んだ

「痛い？」
『少し』

「集中してなかったでしょ？」

傷を見つめながらセンター長は話した

『すみません』

あ～言っちゃった！でも今のはノーカウントだよね？

本当に集中してなかったもん

「ウチの子達は綺麗だから感染の心配はないと思うけど一応ね」
『ありがとうございましす』
「ん！じゃあ仕事に戻ろう、気をつけて」

消毒と傷口の保護をしてセンター長は笑った

集中してなかったのバレてたのか(汗)

見てないようで色々見てるんだよな～

ぼーっとしてるようで

何も考えてないわけでもないみたいだし

相変わらず不思議な人ではあるけれど(笑)

戻って道具を片付けていたら

”私のこと忘れてない？”というみたいに

鍵子さんがやってきた

『鍵子さんブラッシングします？』
「ニャー」

床に座ると鍵子さんは大人しく膝に乗ってきた

ずっとゴロゴロとのどを鳴らしていたが

急にコロンと向きを変えてお腹を見せた

『え？』

他の子では経験があったけど

鍵子さんがこんなことするのは初めてだ

びっくりしつつも見せられたお腹をさわさわとさすっていた

「あら～Aちゃん！鍵子さんに認められたわね｣！

通りかかったおばちゃんスタッフさんが声をかけてくれた

『え？』

「鍵子はセンター長にしかお腹見せないと思ってたわ～すごいすごい！」

幼稚園の先生に褒められたときのようなうれしさと少しの気恥ずかしさに

ほわっとしていると

鍵子さんがパンチしてきた

”あんた！早くしなさいよ！”と言っているみたいだった