moonlight (ページ16)

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「こんにちは〜お疲れ様でぇ〜すっ」

センターと猫カフェの営業時間が終わる頃

今日もディノがやってくる

きっとハンソルに様子を見に行くようにと

言われてるんだろう

「今日もお疲れ様、ディノ」

「ドライブも楽しいですよ？
ついでにおばあちゃん家にも寄れますし！」

ディノは気が利く孝行者だから

おばあさんもよろこんでいるだろう

「で！今日はおばあちゃんのキムチ！貰ってきましたー」

ありがたい

ディノのおばあさんのキムチは

本当に美味しいから

「ウォヌさんAさんは？」
「さっきまでその辺にいたけど…？」

今日彼女が担当の夕方の餌や水の準備は済んでおり

チェック表にもきちんと印がしてあった

あとは夜のケアの時間まで自由…でもどこへ？

「Aさーん？」

ディノが呼ぶと
カフェのバイトの子が

「あ〜、彼女なら上ですよ〜おつかれっしたー」

と笑いながら出ていった

「「上？」」

俺たちは顔を見合せる

全ての建物が平屋だから2階なんてないのに？

「上〜上...？？」

窓から外を眺めてたディノが大きな声を上げた

「ウォヌさん！あれ、なんの光ですか？」

ディノの指先を追うと庭の大木の真ん中辺り

太い幹の分かれ目あたりで何かが光っていた

まさか！？

俺たちは外へ飛び出し木まで走った

「Aさん？」

ディノが声をかける

『あーディノくん！こんばんは！』

彼女は能天気に答えた

一体なぜそんなところに上がっているんだ？

「危ないですよ、降りれます？ってか早く降りて！」

『え〜わかった今降りるからぁ～』

ディノが叫ぶので彼女はしぶしぶ降りる気になったらしい

あたりは薄暗くなってきていたので

危ないなと思ってみていたら

『きゃー』という悲鳴とともに

彼女が降ってきた

ドサッ

『痛ったぁー』

下は芝生だし、

何より俺がクッションになったから

君は痛くないはずでは？

抱きとめ、いっしょに芝生に倒れた拍子に

メガネが吹っ飛んだ

探さなきゃ

「Aさん、とりあえず俺の上からどいてもらっていい？」
『あ、ああっごめんなさい』

慌てた彼女の声と体の上から重みが取れた瞬間に

くしゃっと嫌な音が聞こえた

「あーあ…」

ディノがスマホのライトで照らしたあたりには

壊れた俺のメガネが転がっていた