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38話 ページ39

買い物を済ませた博多と日本号は一期に食材やらを渡し、ご飯を作る様お願いしたらしい。微かに漂う香りが鼻孔をくすぐった。


流石に宗三と小夜のいるあの手入れ部屋で膝を突き合わせる訳にもいかないので、別の、綺麗な部屋に移動させてもらった。


アタシの両サイドには日本号と博多。目の前には非常に良い笑みを浮かべた亀甲の姿。その右に正座するのは小烏丸だった。
見れば見るほど痛々しい。白い服は自身から出たであろう血で大分赤く染まっていた。所々服が切られていてそこから見える傷や痣はなんとも痛々しい物で思わず目を逸らしたくなった。しかし、亀甲のその表情は嬉々としている。瞳だって光を失っていない。


寧ろ、瞳は此方を期待する様な視線だ。偶に思わず、と言いたげに口からふふふ、と笑い声が漏れている。


「僕はね、ご主人様に期待しているのだよ。前のご主人様は僕がこう言う性格だという事を理解して暴行しか働かなくてね。だから、他より怪我が多いんだ。でも、あれは違うね。僕が欲してるのは、『愛のある痛み』なんだ」

「………あ、はい」

「その素っ気ない返事…ッそういうプレイかい!?」

「そりゃ何ていうプレイだよ、」


ダメだ、亀甲相手はどうも気が削がれる。別に嫌い、という訳では無い。嫌いでは無い。部下の近侍にいた亀甲に、一度麻縄で縛る様詰め寄られた事が流石に印象に残ってしまった。


部下に言われた一言は「あー、課長Sっぽそうですね。その赤いピンヒールとかモロ」だ。
一時期この赤いピンヒールをお蔵入りさせようと本気で思った事がある。


「……結局、亀甲はアタシに何をして欲しいんだい?」

「僕は、君に愛のある痛みを与えて欲しい、」
「それ、本心から言ッてンのかい?」

亀甲の言葉に被せる様に問うた。それに亀甲は浮かべていた笑みを固まらせた。びくりと肩を揺らして目を見開く。次にはそれを隠す様に小さく笑いながら
「勿論、本心からだよ」
と言う。表情は先程より余裕がなくなって、動揺も見て取れた。


「ウソ、吐いてンじゃあないよ。確かに亀甲、アンタという刀剣は被虐趣味だ。だけど…アンタは今、痛みを感じていないな。痛覚を感じない身体になってるだろ。或いは、痛みに慣れ過ぎて、ある程度の痛みには何も反応できない様な身体になってる」


愛の無い痛みを奮われ続けた、此奴はそう言った。
多分、愛のある痛みなら己が痛覚を認識できるのでは無いか、とでも考えたんだろう。

亀甲が息を呑んだ

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ガーベラ - はじめまして!課長様、姉貴肌ですね〜。こんなお姉ちゃん欲しかったな〜。続き楽しみにしています!これからも更新頑張ってください! (2020年11月28日 20時) (レス) id: cdc708129e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:病蛟 | 作成日時:2020年7月12日 17時

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