怪盗、歌姫、ミュージカル【怪盗キッド/黒羽快斗】

32 そして閉幕大団円！(完結) ページ32

「こら、何笑ってんだ」
快斗くんの不機嫌な声が耳元で響くが、私は笑いが止まらなくて肩を震わせる。
「だ、だって、快斗くん可愛いんだもん……！」
「はあ？？？」
不機嫌な声が少々驚きを交えたものに変わる。
「可愛いって、Aお前な……俺は真剣に嫌なんだからな、お前があいつと共演するの」
「わかってる、わかってるけど……可愛いって思っちゃったんだもん」
ようやく少し笑いが治まってきて顔を上げるとそこには拗ねたような表情の快斗くん。ついつい頭を撫でてしまった。
「子ども扱いするなっつーの」
「嫉妬深い心配性な彼氏さんを宥めてるだけでしょ？」
「ったく、こっちの気も知らねーで……」
気に入らなさそうにしながらも快斗くんは私に撫でられるままだった。
「そんな事ないよ。……私の事本当に好きになってくれてるんだなあって嬉しく思ってるよ。まあ確かに、今後大変そうだなあとも思うけどね？」
私の言葉にちらりと快斗くんがこちらへ視線を向けた。
「独占欲は強いって言ったろ？……恋人同士になったら安心するかと思ってたけどぜんっぜんそんな事ねーな……寧ろより心配になったっつーか」
「拗らせちゃった感あるね……」
「言っておくがAが悪いんだからな。これだけ俺を惚れさせるから悪いんだ」
さてどうしようか、私は考え込んだ。彼の機嫌を直すいい方法はないだろうかと考えて……

そうか、と思いつく。気を逸らせる程度かもしれないが効くかもと思えば──



私は意を決して、快斗くんの唇に自分の唇を重ねた。



数秒してゆっくり離れて瞼を開けると、思い切り目を見開いて固まっている快斗くんが目に入った。──成功だ。

「もう、いつまでも拗ねてないでよ、折角一緒にいるんだから、ね？」
私が少々困ったように笑ってみせると、固まっていた快斗くんは一気に顔を真っ赤にした。
「───っ！！」
慌てて彼は手で口元を覆う。本当に自分からはぐいぐい来るのにこっちからすると弱いなあ、と思わず笑ってしまった。
「ね、機嫌直った？」
そう問いかけると、彼は視線逸らし真っ赤なままぽつりと呟く。
「………もっかいしてくれたら、直るかも」
その言葉に目を丸くするも、しょうがないなあ、と笑っては私は再度快斗くんにキスを落とす。




そんな私達を月明かりが静かに照らしていた───




怪盗と歌姫の大波乱、まるでミュージカルのようなラブストーリーはハッピーエンドで無事に閉幕。
そしてまた、これからも2人の物語は続く───

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