怪盗、歌姫、ミュージカル【怪盗キッド/黒羽快斗】

28 カーテンコールのその後に4 ページ28

「………公開練習の時と、千秋楽を見比べて気付いた事、ある？正確には公開練習の後から変わってたらしいんだけど……快斗くんはその２つしか見てないでしょ？」
突然飛んできた質問に俺は思わず首を傾げた。
「？公開練習と千秋楽を見比べて……？」
その質問に何の意味があるんだろうかと思いながらも俺は暫し思い返してみる。
「……そうだな、Aの演技は変わった、とは感じた」
「───！！！わ、わかってたの！？！？」
俺の言葉に目を丸くしてAが声を上げた。俺は思わずきょとんとしてしまう。
「？そりゃわかるだろ。俺お前しか見てねーし」
「っ！？う、そ、それはどうも……ありがとう……そっか……わかるぐらいだったんだ……ううう……」
ストレートに伝えてやればそれはそれで恥ずかしかったのかAが照れたように呟いた。演技が違ったのが何か問題だったのだろうか。
「そうだな、特にいわゆるラブシーンではな。で？それがどうかしたのか？」
ラブシーンでより何かが違うと感じたのに面白くないと思いつつ彼女に問いかけてやると彼女は視線を合わせないままぽつりと言った。
「……それが、答え」
「は？」
「だから、それが、答え！私の演技がそういうシーンだけ良くなってたの！それは、公開練習後から監督にも言われてたんだけど……」
「でもそれは俺も気付いてるじゃねーか」
春田は俺が気付いていない事がある、と言っていた筈だ。気付いているならこれは答えではないだろうと首を傾げていると、Aは更に顔を真っ赤にして───


「だ、だから！！！演技が変わったその理由！！！「俺を通してキッドを見てたでしょ？」って言われたの………！！もう！！ここまで言わせないでよ！！！」


照れ隠しもあってか彼女が怒ったように声を上げたのに、今度こそ俺はぽかんとしてAを見つめた。

「…………それって、つまり」


「つまりも何もそういう事！！言われるまで無意識にしてたから私も気付いてなかったけど……演技する時に、春田さんを快斗くんだと思ってやってたの！」
ああもう恥ずかしい、とAは涙目になって声を上げていた。公開練習以降に明らかに演技が変わったという事は───

「──────」

思わず俺まで顔に熱が上がってしまい手で口元を覆う。そうか、そういう事か。
とんだ不意打ちを食らってしまった。それはもはや、俺以外を見ていないと言っているようなもので──次の瞬間ついつい笑いが漏れてしまった。

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