怪盗、歌姫、ミュージカル【怪盗キッド/黒羽快斗】

27 カーテンコールのその後に3 ページ27

Aの様子を見てから春田はくすくすと笑うと俺とAに軽く手を振りその場を去っていった。
Aは真っ赤な顔のまま春田を呆然と見送っていて──面白くない、と眉を寄せてしまう。


「……A。何言われた」


「！な、なななんでもない！！っていうか！何で春田さんと一緒にいたの！？青子ちゃんも探してたんだよ！？」
首を振ってから詰め寄ってくる彼女に小さく溜息をついては一瞬でキッドから快斗へと戻る。
「牽制だよ。あいつ、やっぱりお前の事気に入ってるみたいだからな。って言うか何言われた」
「牽制って……！もう、本当春田さんはそういうのじゃないから……！って、言わない。ぜーったい言わない！！ほら、皆待ってるし行くよ！？」
「は？お、おい、コラちゃんと話せっつーの！」
怒ったかと思いきや、春田に言われた事を問い詰めるとまた顔を赤くして首を振る。その上で俺を引っ張っていく様子にまさか告白でもされたのかと思えば逆に腕を掴んで引き寄せてやる。それに驚いて俺の方をAは振り返るが、真っ赤なまますぐに視線を逸らした。そうはいかない。
「まさかと思うけど、今告白でもされたか？」
「ち、違う違う！全然そういうのじゃない……！！」
驚いて首を振る彼女に、どうやら本当に違うらしい事はわかったが、じゃあなんでそんなに真っ赤なのだと首を傾げる。
「じゃあなんでなんだよ。……春田は自分だけが気付いた事がある、って言ってたけど」
「───っ！お願いだからそこは言及しないで……！！」
「………………」
「真顔やめて！！！」
そこまで懇願されると一体どんな後ろめたい事があるのだと思わず冷ややかな視線を向けてしまった。真顔になっていたらしいのに赤いまま青ざめるという特技をAが披露していて思わず面白い奴だなと笑いそうになるが、ここで引き下がるわけにはいかない。
「ふーん？「彼氏」である俺に言えない事ね……？しかも俺が良く思ってない男との間に秘密。へえ？」
「うっ」
「わざわざ「彼氏」に隠し事。逆だったらどう思うんだろーなー？」
「うう……」
「俺はただただAの事が好きで仕方がないだけなんだけどなあ……そんな俺に心配と心労を──」
「───っ！わ、わかった！もうわかったからー！！」
畳み掛けられるのに耐えられなくなったのかAが叫んだ。よし、俺の勝利だ。満足して彼女に笑みを向けると、Aは俺とは視線を合わさずにぼそぼそと話し始めた。

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