怪盗、歌姫、ミュージカル【怪盗キッド/黒羽快斗】

24 予想外の真実 ページ24

「な、まさか。じゃあAが思ってた、俺が隠してた事って────」
「だ、だから性格……！最初は本当にそういう紳士な性格なのかなって思ってたけど……実はもっと幼いというかなんというか……もっと自分の感情に正直な人で、キッドを演じてるのかなあ、って思ってたって事！」

あまりの事に快斗くんは目を丸くして顔を引きつらせていた。が、多分私だって負けていない表情をしているはずだ。




お互いの思い違いからとんでもない事実が明るみになってしまった訳だから。




ややあって、快斗くんが思い切り溜息をついて頭を抱えた。あれ？これって私が悪いのかな……！？！？
「あ、あの……快斗くん……？」
恐々快斗くんに呼びかけてみる。彼は暫し頭を抱えたまま固まっていたが……突然笑い出す。私は思わずびくっとしてしまった。
「っくく……まあ、当たらずとも遠からず、か。俺の正体を見抜いた訳じゃなかったが───まあいい」
そういうと快斗くんは顔を上げる。その表情は、昼間に何度か見た悪巧みを思いついた悪戯っ子のような笑みを浮かべた表情。嫌な予感と同時に反射的に距離を取ろうとするが、見事にそれは見抜かれて瞬時に腕を伸ばされ掴まれてしまう。
「──どこに行くつもりだ？言っておくが、この怪盗キッドの正体を知ってしまったんだ、逃げられはしねーぜ？」
「い、いや知りたくて知った感じではどう考えてもなかったよね！？」
「知ってしまった事実に変わりはねーだろ？ま、元々逃がすつもりも全くもってねーけど」
そう言うと快斗くんは立ち上がり私との距離を詰めた。腕が掴まれてる以上逃げようがないのだが、それ以前に快斗くんの吹っ切れたようなこの悪い笑みに変な汗が流れる。至近距離で顔を覗き込まれて私は固まった。快斗くんの笑みが深くなる。


「───ま、そういうわけだ。お前も俺を意識し始めたしちょうどいいだろ。この怪盗キッドの──黒羽快斗のものになって貰うぜ？勿論、承諾以外の返事は聞かねーからな？」



「───横暴だ……！！！」



非常に意地の悪い笑みで告げられるそれに一瞬固まっては、私は思わず青い顔で涙目になりつつ抗議の声を上げる。

勿論、そんな抗議が彼に通るわけもなく。

「横暴も何も、天下の大怪盗の心を盗んどいてタダで済む訳ねーだろ？恨むならA自身を恨め」

そう言ってはその笑みのまま自然に重ねられた唇に、私のそれ以上の抗議は完全に掻き消されたのだった───

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