エピソード166 魔法の言葉 ページ29
緑谷side
ヒーロー殺しの個性“凝結”によって
飯田君とネイティブはまだ立てない。
闘えるのは僕と轟君だけだけど、
轟君は血を流し過ぎてるから
僕が接近戦、轟君が後方支援という形になった。
一瞬一瞬が命取りで、
考える隙さえ与えない。
余裕を与えない。
こっちが完全に不利だった…
しかし、彼女が現れた。
怪我をした全員を一瞬で治した。
疲れさえも感じさせない、
精度の高い完全治癒。
『ここは私に任せて、早く逃げて！
そして一刻も早くプロを呼んで！！』
緑谷「貴方1人では無理だ！殺される！！」
ヒーロー殺しは格上…ヒーラーの彼女が、
お世辞にも勝てるわけがない。
『ヒーロー志望が
誰かを救うために
敵に殺されるのは本望よ…！』
緑谷「…怖く、ないんですか？」
『怖いに決まってるでしょそんなの。
だけど…
こんな化け物野放しにする方が怖い。』
彼女が生み出した刀は
ヒーロー殺しがヒーローを殺すため、
人を傷つけるための刀じゃない。
彼女が救う人たちは
顔も名前も知らないような
彼女の心や体を傷つける
人かもしれないのに
ただひたすらに人を信じる
敵だって信じて護るための刀だ。
そんなの…
オールマイトより、凄いじゃないか。
『こいつの理想のせいで
涙を流す人がいなくなるなら、』
飯田君の唇を噛み締める姿が頭に浮かぶ。
『こいつが人を殺さなくても、
これ以上罪を背負わなくても良くなるなら、』
ステインは驚いたように小さな瞳を見開く。
『私がここで、こいつを…
こいつの、”ヒーロー殺し”を終わらせる…！！』
心を掴んで離さない言葉たち…
この人は…
ヒーローのいいところも、悪いところも
敵のいいところも、悪いところも
この社会のいいところも、悪いところも
全部全部知ってるんだ。
360度全ての角度から見て、
見たからこそ今何をすべきなのか
どの言葉を使えば、人の心に溶けるのか
全部知ってる。
彼女の言葉から、その背中から伝わってくる、
この人は強いんだっていう証明。
まるで、オールマイトのような人だ。
『英傑から言葉を借りようか…
だからもう大丈夫だよ、』
誰もが知ってる、
誰もが心が震える魔法の言葉…。
『 私が来た…！』
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作者名：胡桃 | 作成日時：2019年1月23日 16時
