エピソード162 微塵も ページ25
ワープゲートの先に広がるのは、
赤色に染まる、夕暮れが一望出来る場所。
風に揺蕩う、赤い巻き物と包帯…
そこには、ヒーロー殺し・ステインがいた。
死柄木「保須市って…思いの外栄えてるな…
で…？あんたは何をする？」
ステイン「この街を正す。
それにはまだ、犠牲がいる。」
まだ…私の声は、言葉は…
彼の心に届いてなかったんだね。
黒霧「先日仰っていた…
やるべきことというやつですか？」
ステイン「お前は話がわかるな。」
『いちいち角立てるなぁおい。」
ステイン「ヒーローとは！
偉業を成した者のみ許される称号！
多すぎるんだよ、！
英雄気取りの拝金主義者が！
この世が自らの誤りに気づくまで、」
自身の背中に携帯した日本刀を手に取った。
ステイン「俺は現れ続けるっ！！」
相変わらず素早い動きで、街へ降りて行った。
死柄木「あれだけ偉そうに語っておいて、
やることは草の根運動かよ。
健気で泣けちゃうねぇ」
死柄木さんはそう言って、また首を掻き毟り始めた。
首の傷は綺麗に戻したけど…
刺し傷は、有り有りと残ってる。
昨日…刺し傷を戻そうとすると、
死柄木さんは私の手を制した。
「この傷は、今は残しとく。」
そう言った。
きっと、ステインへの復讐心の証として…
ステインに制裁が下されるまで、
残すつもりなんだなって思った。
痛みを伴ったとしても。
黒霧「そう馬鹿にも出来ませんよ。
事実、ステインの現れた街は、
軒並み犯罪率が低下しています。
ある評論家が、ヒーロー達の意識向上に
繋がっているとバッシング
を受けたこともあります。」
死柄木の首を掻く動きが早まる。
ステインの思惑通りなのは…
それはいいことのはずなのに、
素直に喜べない自分がいる。
もっとも、死柄木はご立腹だけど。
死柄木「それは素晴らしい！
ヒーローが頑張って
食い扶持を減らすのかぁ！
ヒーロー殺しは
ヒーローオブリーダーでもあるんだなぁ！」
微塵も思ってない口振りだった。
やっぱり、私の知らない死柄木さんは
恐ろしい。
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作者名：胡桃 | 作成日時：2019年1月23日 16時
