エピソード160 今は ページ23
『私はいろんなヒーローを見てきた…
その中でも、貴方の言うように
助けを求める人の声を
聞こえないふりして
手遅れになった時…
手遅れだった…でも、仕方ないって
救える命を粗末にしたくせにさ、
そんなこと言う権利ないやつが
堂々と言うのは正直虫唾が走るよ？』
思いっきりカウンターの板を叩き割る。
飲みかけのグラスが無残に割れ、
ブランデーが床に染み込む。
『だけど…
そんなヒーローでも、
そのヒーローに助けて貰った命があるはず。
その人にこれから助けられる命があるはず。』
叩き割った板も、硝子もブランデーも、
全部元に戻す。
それを驚いたように見るヒーロー殺し。
『足元の覚束ないような
チンケに見えるやつだって、
実は立ち直れないほどの
辛い過去があるかもしれない。
だけどその過去を振り払って、
今を生きて、未来を創る。
案外強い人なんだよ、
そうやって生きてるのは…
貴方もでしょ？』
敵「あんたの言葉を信じて、
何が変わる？
俺の理想があんたに理解出来んのか？」
『私は…今の貴方の理想は理解出来ない。
犠牲のある理想は、私の理想じゃないから。
でも貴方がいつか…
犠牲のない貴方の理想を創ってくれるなら、
私は貴方の理想を理解出来る。
この力を、貸すことも出来る。』
敵「そうか、」
納得したように、ワープゲートを潜った。
『…ごめんなさい黒霧さん…
ずっと待ってて貰っちゃって。』
黒霧「お気になさらず…お陰様で、
こちらの印象も大分良くなったみたいですし」
『それなら良かった』
死柄木さんの姿を見ると、一気に涙が溢れてきた。
死柄木「泣くなよ、」
殺気を感じるほど怖い顔。
そこから読み取れる辛い過去。
死柄木さんを知った気になってた自分。
痛々しい傷。
全部が一気に降りかかって、
なんだか心がアルミ缶みたいに潰されたみたいだった。
『死柄木さん、ごめんね…』
伝えたいことが多すぎて、
今はこれしか伝えられなかった。
死柄木「謝んなよ、何も悪くないのに。」
また優しく背中を撫でてくれる。
その掌は、ごつごつしてて細いのに、
あったかかった。
今回感じたことは、絶対に忘れない。
死柄木さんが泣きたくなった時に
これをまた話そう。
この感情で、死柄木さんの涙を拭いてあげるんだ。
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作者名：胡桃 | 作成日時：2019年1月23日 16時
