エピソード156 独り占め ページ19
死柄木side
どうして咄嗟に抱き締めてしまったのか、
自分でも混乱している。
好きで好きで堪らない子に、
自分の泣き顔を見せたくなかったのか。
あるいは、親はおろか、先生にだって
言われたことないような
優しい言葉をかけて貰ったからか。
でも一つ言えることは…
今、この子を抱き締めてるのは
敵としての自分じゃない。
Aの穢れなき心から溢れ出した
桜色の唇を柔らかく動かして紡ぐ言葉が
俺の汚れた心を優しく撫でて
真っ白な心に変えて
ただ1人の人間として抱き締めてる。
愛のあるハグ、そう思ってる。
自分のためにその綺麗な顔を
ぐしゃぐしゃに涙で濡らしてまで
泣いているのが
本当に嬉しかった。
死柄木「Aは優しい子だね」
『死柄木さんが優しくしてくれるからだよ』
嬉しそうに笑う。
その笑顔が、太陽みたいに眩しい。
その太陽は、他のヒーローの鬱陶しい眩しさとは違う。
心があったかくなるような…そんな優しい眩しさだ。
もしも俺が、先生よりも先にAに出会ってたら…
きっと俺は、全く違う人生を歩んでいた。
Aの笑顔と優しさがあれば…
俺はなんだって乗り越えられたかもしれない。
過去を悔やむことが無意味だと承知してるのに、
どうしてもこれだけは思ってしまった。
だからこそ。
いつか、
その笑顔を独り占めしたい。
その涙を独り占めしたい。
溢れ出す欲求が、脳内を駆け巡った。
『…‥』
俺の腕の中で、規則正しい吐息が聞こえる。
死柄木「ったく、しょうがないな…」
Aを横抱きして、部屋に連れて行った。
眠ってるときは、驚くほど大人びて見える…
―――――
Aside
死柄木さんに抱き締められて、
それが物凄くあったかくて…
うとうとしてると、
急にふわっとなって
ふかふかのお布団の上にいる。
死柄木「早く大人になれよ」
死柄木さんはたしかにそう言った。
その言葉の意味を知りたくて、
ぐるぐる考えてると…
かさついてるけど
柔らかいモノが頬に優しく触れた。
目をうっすら開けると、
死柄木さんが丁度部屋を出て行った。
今のって、キス…？
そう思う頃には、睡魔が襲ってきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：胡桃 | 作成日時：2019年1月23日 16時
