エピソード152 名付け ページ15
死柄木「お。おかえり」
『ただいま！』
結局あのマシンに没頭し過ぎて、
すっかり日が落ちていた。
『お腹空いた〜！』
黒霧「今日は久しぶりにAさんが来たので…
ちょっといつもより奮発しましたよ」
『やったぁ♪』
カウンター席に座れば、黒霧さんが私と死柄木さんの前に
出来立ての御馳走を置く。
黒霧「さあ、召し上がれ」
『いただきます！』
黒霧さんが作ってくれたのは、
チーズたっぷりのグラタンに、
ミネストローネとサラダ。
優しい味…オカンの味←
頬張った瞬間に幸せが溢れ出す。
じんわりと口の中に感動が染み込んだ。
死柄木「ほんっと幸せそうに食うよな…」
マスクを外した死柄木さんが、
私を見ながら優しく微笑んだ。
その赤い瞳に、また見惚れてしまう。
『死柄木さん…マスクない方がかっこいい』
そう言うと死柄木さんは目を見開いて、
そっぽを向いてしまった。
黒霧の方を見てみると、目を細めて笑ってた。
黒霧「ピュアですね、死柄弔。」
いや、意味わかんないんですけど。
私だけが、なんだか意味がわからないままだった。
ご飯を食べ終えて、黒霧さんのお皿洗いを手伝う。
カウンターに座ったままの死柄木さんは、
綺麗な赤で透き通ったカクテルの青を見つめていた。
それだけで絵になる。
綺麗だな…いつ見てもそう思える。
洗い物が終わると、
私は死柄木さんに手招きされて隣の席に座った。
死柄木「そういえば、ヒーロー名決まってないの？」
『うん、』
死柄木「ふ〜ん…。」
そういうと死柄木さんは黒霧さんに耳打ちすると、
ワープゲートから沢山の書物を取り出した。
『どうしたの急に！？』
死柄木「今日の目標はヒーロー名の考案だ」
『え、』
私は固まったまま動けない。
死柄木「なんか問題でもある？」
そんな私を見兼ねてか、
死柄木さんは私の顔を覗き込む。
『だって…死柄木さん、ヒーローのこと嫌いでしょ？』
それが気がかりだった。
死柄木さんはオールマイトを始めとする、
ヒーローのことが大嫌いだ。
それを壊すために、罪を背負って
この社会に対抗してる。
なのに…大嫌いなヒーローの名前を、
つけるなんて、どうだろうなって思った。
私達の間に、沈黙が流れる。
死柄木さんの掠れた吐息が聞こえた。
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作者名：胡桃 | 作成日時：2019年1月23日 16時
