22 ページ22
次の日の朝。いつもとは違う朝で、工場長に呼び出しをくらった。工場長室へと足を運んでは、工場長の許可をもらい部屋へと入る。
「乙瀬A。あなたのご両親から手紙が届いた」
工場長は目の前に手紙を差し出してきた。それを受けとる。
手紙なんて月の始めにまとめて渡されるのに、わざわざ呼び出してまで手紙を渡すとはどのような一大事なのだろうか。
『ありがとうございます。読ませていただきますね』
手紙を開けば右端から読んでいく。
あなたの結婚が正式に決まりました。
来年の春には籍を入れる予定です。
いろいろ修行を積まないといけないので冬には帰ってきてください。
「親御さんからはいろいろお世話になっていて、普段なら帰すわけにもいかないが、特別に家に帰すことになった」
手紙を読んでいたが上手く文字との焦点が合わなくなる。
いつか結婚をするために帰ってきなさいと親に言いつけられることは分かっていたが、まさかこんなに早い時期に言われると思わずうまく頭で処理ができなかった。
なんで好きでもない人と結婚しないといけないのだろうか。せっかく結婚がいやで抜け出してきたというのに、家に戻らないといけないのだろうか。
嫌だ。まだここにいたい。私の指が血塗れになるほど働かされていたって構わない。だからまだここにいたい。
それにせっかく出会えた絹や花子に涼と別れるなんて辛い。
「まぁまぁそんなに悲しまなくても。せっかく働かなくていいというのに」
『いいえ。まだ働いていたいです』
「君ならそう言うと知ってたよ。だって未練があるんでしょうね、彼に」
彼に？トントンにということなのか。
「どうせあのトントンという軍人だろ。あんな仲良さげにしてもらうと困るんだよね」
「あんただけに情があったら、軍人があんたを贔屓して立あんたの立場が強くなっちゃうだろ。だから、早めに去ってくれてありがたいね」
こちらを煽るような言い方で工場長はいった。そんな事を考えていたのだと考えると全身の血が騒ぐような気がした。
「ちなみに、彩っていう子に最近苛ついてるだろ？そいつはトントンに近付くようにいってあるからな。まぁ、好意を持たれたら捨てるように言ってるけどな」
べらべらと喋る男に殺意まで覚えた。ぬるぬると動くその舌を今すぐにでも切ってしまいたい。
「まぁ、大人しく働いてくれ」
工場長は煽るように肩を二回叩いてきた。そして、私は部屋から出た。泣きたい思いを飲み込んで。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1028人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凛 - 更新してくださりありがとうございます。これからも自分のペースで頑張ってください。 (2021年12月30日 21時) (
レス) id: 35d08cc685 (このIDを非表示/違反報告)
青い朱雀 - すっっっっき... 無理せず、更新頑張ってください。 (2021年12月18日 10時) (レス) @page24 id: e603c0dff1 (このIDを非表示/違反報告)
菊 - 続きが気になります。 更新頑張ってください。 (2021年11月28日 16時) (レス) @page23 id: 35d08cc685 (このIDを非表示/違反報告)
大根おろし(プロフ) - 更新を気長に待ってます、頑張ってください (2021年4月25日 16時) (レス) id: b2446655e6 (このIDを非表示/違反報告)
青(プロフ) - あずきもち。さん» ありがとうございます！ (2021年3月14日 22時) (レス) id: ba86ab62db (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あなたのしゅきぴ♡ | 作成日時：2020年6月21日 9時
