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「今日から視察させてもらう…トントンや。あんま関わることはないがよろしく頼む」
顎をつんと少し上げて上から見下ろすように挨拶してくる。トントンと名乗る人は小綺麗なカーキ色の軍服をきっちりと着こなし、眼鏡をかけていた見た目から真面目だと分かる。私はああいう偉そうにしている人はあんまり好きではない。
『私はあんま好きじゃない…』
隣にいた絹に小声で言った。すると、絹は焦ったような表情で此方を見ては顔をくいっと動かし「前！前！」とでも言うようだった。
前…？恐る恐る前を向くと眉をしかめたトントンと目がばっちり合った。
「俺がなんや？言うてみ…」
『いや、何にも言ってません』
「ほーん…えらい上から目線やな」
お前が言うかと心の中で思ったがこの人は面倒な人だと本心が分かっていたのか言い返すのはやめた。
『すみませんでした』
「不貞腐れた態度やけど、許したるわ」
偉そうな態度に心がムカムカしながらも立場をわきまえて大人しくすることにした。やっぱり私はトントンが嫌いだ。
…
それからはいつもの業務に励んだ。
煉瓦でできた長屋の繰糸所は、機械の音が響いている。私たちは煮繭が終わり、引き出した糸を複数撚り合わせて繰糸していた。いわゆる女性が得意な細かい作業を行っている。
労働時間12時間にでもなると、心を無にしてやらないとやっていけないが、今日は無にはできなかった。
あの男…工場長と何を話しているんだ
工場の角の方で、トントンと工場長は何かしら話している。働きもしないし、ただ話しているだけ。なんなら、私たちと同じ作業服にでも着替えさせて働いてほしいくらいだ。
うざい。
心の中で悪態をついた。別に聞かれることでもないので心の中では言いたい放題だ。
うざいうざいうざいうざい。
ぱちりとトントンと目が合った気がしたが、ふんと鼻を鳴らして目をそらしてやった。
さっきのやり返しの気持ちでやったので、心が少し晴れたような気がした。
※繰糸…複数の糸を撚り合わせて一本にする
※煮繭…繭から糸を引き出す。
仕事内容としてこういう言葉がでますが、あまり知らなくても分かるようになります。
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凛 - 更新してくださりありがとうございます。これからも自分のペースで頑張ってください。 (2021年12月30日 21時) (
レス) id: 35d08cc685 (このIDを非表示/違反報告)
青い朱雀 - すっっっっき... 無理せず、更新頑張ってください。 (2021年12月18日 10時) (レス) @page24 id: e603c0dff1 (このIDを非表示/違反報告)
菊 - 続きが気になります。 更新頑張ってください。 (2021年11月28日 16時) (レス) @page23 id: 35d08cc685 (このIDを非表示/違反報告)
大根おろし(プロフ) - 更新を気長に待ってます、頑張ってください (2021年4月25日 16時) (レス) id: b2446655e6 (このIDを非表示/違反報告)
青(プロフ) - あずきもち。さん» ありがとうございます！ (2021年3月14日 22時) (レス) id: ba86ab62db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あなたのしゅきぴ♡ | 作成日時：2020年6月21日 9時
