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『私、製糸場で働きます』
17歳。乙瀬Aは宣言した。
そんなことを両親の前で言ったのは、一年前の話だ。
元々親が勝手に決めた興味もない相手との婚約だった。親が決めたものだ。断ることなんてできるはずもなく、成り行きでそうなってしまうのは分かっていた。それに、婚約者には思い出したくもない悪い思い出が脳裏に焼き付いていた。
結婚したくない。
だが、とある話が舞い込んできたのだ。
『製糸場で働く工女を募集…』
街の間ではそんな話が広まっていた。
どうやら、海辺の方に製糸場という蚕の繭から生糸をとる工場ができたそうな。虫を触りたいなんていう女の子は少ないのに。
そう思っていたが、ふと頭のなかで思い付いたのである。
『ここで働けば、結婚しなくもいい？』
そんな思い付きで工女として製糸場に勤める今があった。
現実を今から述べよう。就業時間は10時間。おかげで足はパンパンに膨れ上がっていた。
そして、食事は麦飯に味噌汁、漬物。私にとっては少なかった。初めはふくよかだった身体もだんだんと痩せていき、お陰様であんなにいっぱい入った胃袋も縮まった。
休暇は月に4回。前までは外出禁止がだされたが、今は自由に買い物ができるようになったらしい。だが、もっと休みたいのが切実な思いであった。
『はぁ…とても楽ではないわね』
ぽつりと愚痴が口から溢れる。愚痴を聞かれたりしたら他の娘から密告されるのは分かっていたが、それでも言いたいくらい溜まっていた。
「そんなこと言っても楽にはならないよ。分かってるでしょ？」
ふっくらとした唇が印象的な17歳の絹は溜息混じりでいった。絹とはここに来るときの宿で意気投合した。絹は父親に言われてここで働くように言われたらしい。本当は働きたくなかった、と毎日言っている。
『期待なんてしてないよ』
言い返してきた絹に冷たくそう吐いた。「そうね」とだけ絹はそっけなく返した。お互いのプライドが邪魔し合い冷たくなるのはいつものことだ。
『それより、今日は工場長を見かけないわね』
「それはそうよ。軍人さんがうちを見に来るらしいの。その接待よ」
『え、初耳なんだけど』
軍人がここに来るなんてここにきて初めて聞いた話だ。いや、前からあったのかもしれないが私が知らないっていうだけだ。
それにしても軍人は初めて見るが、きっと"あの男"のようなものなんだろう。
どこか期待していた思いも自身で解決した。
※工女…工場で働く女性
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凛 - 更新してくださりありがとうございます。これからも自分のペースで頑張ってください。 (2021年12月30日 21時) (
レス) id: 35d08cc685 (このIDを非表示/違反報告)
青い朱雀 - すっっっっき... 無理せず、更新頑張ってください。 (2021年12月18日 10時) (レス) @page24 id: e603c0dff1 (このIDを非表示/違反報告)
菊 - 続きが気になります。 更新頑張ってください。 (2021年11月28日 16時) (レス) @page23 id: 35d08cc685 (このIDを非表示/違反報告)
大根おろし(プロフ) - 更新を気長に待ってます、頑張ってください (2021年4月25日 16時) (レス) id: b2446655e6 (このIDを非表示/違反報告)
青(プロフ) - あずきもち。さん» ありがとうございます！ (2021年3月14日 22時) (レス) id: ba86ab62db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あなたのしゅきぴ♡ | 作成日時：2020年6月21日 9時
