例えば君が…３ ページ5
遠くで玄関のドアが閉まる音が聞こえる。
ブランケットに包まっていた雅紀は、そのまま目を閉じた。
昨晩は殆ど眠れなかった。
一人で部屋にいると、どうしても思い出してしまう。
秋の夜長、読書でもできれば良かったのだろうが、嫌な思い出に埋め尽くされた気持ちでは何をする気にもなれず、そのまま一晩を明かした。
この道を選んだのは自分であり、それを後悔したことはない。
だが、身体の弱さを選んだのは自分ではないし、それは自分自身が一番疎ましく思っている。
しかし、どんなに疎ましくても、自分にはどうしようもできない。
上手く付き合っていくしかないのだから。
それを理解してくれている兄弟や友人。
その人たちだけが分かってくれていれば良いと、ずっと思ってきていた。
しかし、社会に出て、兄達と店をやっていくにあたり、日々出合う人というのは増えていく。
季節も変わり、常連客もつくようになってくれてはいるが、出会いの殆どが一期一会。
当然、このカフェのオーナーは、体調を崩しやすくて、店が休みの日が多いというのは、常連客しか知らない話し。
こうなるとは予想出来ていた。
自分が店に立てる日の方が、はるかに少ないと。
そして、それでも兄達は自分を受け入れてくれた。
それは、これ以上ない幸せであると、ずっと思っていた。
しかし、それは昨日の何気ない他人の言葉でもろくも崩れ落ちる。
『今日も休み？最近多くない？』
『仕方ねえよ、ここのカフェは、店員が一人しかいなくて、しかもそいつが身体弱いから休みが多いっていう話だ。』
『はぁ？身体弱いなら、何で飲食業やってんだよな。いつ来ても閉まってるなんて、意味ねぇじゃん。』
昨日はコーヒー豆の仕入れと、カフェで出している和菓子の相談にあやめの家へ相談しに行っていた。
決して具合が悪くて、カフェを休みにしていたわけではない。
れっきとした仕事だ。
その話をしていた客らしき男二人は、たまたま運が悪かっただけなのだ。
そして、その話を店の外で作業をしていたために、こっそり聞いてしまった雅紀も運が悪かった。
男二人の呆れたような口調が耳に残り、会話が何度も脳内に流れる。
今朝、具合が悪かったのは寝不足なのと考えすぎのせいだ。
兄弟で一番楽観的に思われやすい雅紀だが、実はその逆で一番繊細だったりする。
雅「…俺だって、こんな身体に生まれてきたかったわけじゃない…。」
誰も聞いていない言葉は、そのまま落ちる。
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chamiN614(プロフ) - はじめましてm(_ _)mちゃみんと申します。緑ちゃんが可愛らしくて、家事そっちのけで一気読みしてしまいました^_^他のみんなが緑ちゃんに対して優しい反面時に厳しくの関係がなんだかほっこりしました。続きが楽しみです。更新楽しみにしています^_^ (2019年10月4日 9時) (
レス) id: d892573298 (このIDを非表示/違反報告)
はるやん(プロフ) - ちぃちさん» お返事が遅くなってしまい、すいません。コメントありがとうございました。一気読みしていただけるなんて、嬉しいです。遅い更新ですが、復活しましたので気長にお付き合いいただけたら幸いです。よろしくお願いします。 (2016年8月11日 22時) (レス) id: 96da3992ed (このIDを非表示/違反報告)
ちぃち(プロフ) - はじめましてちぃちと申します。楽しくて一気に読みきってしまいました。兄弟の仲の良さにほくほくしています。更新楽しみにしています 。。 (2016年1月16日 8時) (レス) id: bcc2d1cf7a (このIDを非表示/違反報告)
はるやん(プロフ) - みかんさん» こんにちは。拙い作品ですが、最初から読んでいただけて、光栄です。更新かなり遅めですが、気長に待っていただけたら嬉しいです＾＾ (2015年9月2日 7時) (レス) id: 96da3992ed (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - こんにちは！夕焼け小焼けはじめから読ませて頂きました。とても面白くてほっこりした暖かい気持ちになりました。これからもはるやんさんのお話楽しみにしています！ (2015年9月1日 15時) (レス) id: 72a8a6a586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はるやん
| 作成日時：2014年10月22日 12時
