懺悔６ ページ50
話し始めてから、暫く黙ったままの昌宏。
双子が訝しむ。
潤「…あの、兄ちゃん？」
昌「…んー…。あ、いや。簡単に結論だけ話すぞ？詳細は智達も把握しているか、正直解らん。何せ、あの頃の智でさえ中坊だからな。俺が知っていることも、全て本当か解らないし、今更知る手立てはない。だから、全てを鵜呑みにするなよ？」
和也と潤は頷く。
昌「…叔母さんが、付いて行ったんじゃない。叔父さんが、連れて行ったんだよ。」
大人の事情ってやつでな。
と付け加えた昌宏は、それ以上何も言わず、タバコに火をつけた。
智「落ち着いた？」
穏やかな声。
そして、もう一つは静かな泣きそうな声。
波の音だけが聞こえていた世界に、二つの声が響き始める。
雅「…智兄、俺…。」
智「ん？」
雅「…俺…。」
智「うん。」
智は穏やかに答える。
雅「…産まれて、良かったのかな…。」
波の音が、やけに大きく聞こえた。
雅紀の言葉に、智は懐かしそうに柔らかく笑った。
智「…おいらね、今でも覚えてるよ？母ちゃんが、弟か妹がお腹にいると教えてくれた時のこと。翔君なんて、クリクリな目が本当に輝いちゃって、何度もいつ生まれるのかって、聞いてた。」
『おかあさん、ほんとう！？』
『翔、そんなに嬉しいの？』
『うん、ぼくいっぱいいっぱい、おにいちゃんになる！』
智がフフッと懐かしそうに笑う。
智「今思えば、嬉しすぎて翔くんが支離滅裂な言葉言ってたな。…おいらも、本当に嬉しかったぁ。そっからは、毎日毎日母ちゃんのお腹撫でて、雅紀に話しかけたりさ。」
『赤ちゃん！智兄ちゃんだぞ〜。』
『あ、さとにぃズルイ！ぼくも！』
智「病院で見た赤ちゃんは、本当に小さくて、元気に泣いてたっけ。」
『わぁ！』
『ほら。この子が雅紀よ。』
『…小さいな。』
『おかあさん、ぼくだっこしてもいい？』『えぇ、良いわよ。』
『わぁ、ふわふわ〜。はじめまして、赤ちゃん。ぼくがしょうだよ。』
智「ふふっ…本当に小さくて元気に泣いてた赤ん坊が、今こんなに大きくなって…。」
智が雅紀の肩を抱いて、引き寄せる。
水平線が白み始める。
智「お前が産まれてきてくれて、おいらも翔君も本当に嬉しかったよ。そして、曲がらずに優しい素直な子に育ってくれて、もっと嬉しい。」
雅紀の肩が揺れる。
智「おいら達の弟に産まれてきてくれて、ありがとな。」
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お待たせしました。
以降します♪
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作成日時：2013年1月31日 23時
