夕焼け小焼け【緑さんメイン】 (ページ48)

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懺悔４ページ48

波の音が聴こえる。
それ以外に聴こえる音はなく、雅紀は砂浜に座り、海を見ていた。

ここは、雅紀お気に入りの場所。
あの家から少し離れているが、大人になった今は大した距離ではない。

昔から何かあれば、ここに来ていた。
テストで悪い点を取った時。
父や母、兄達に叱られた時。
弟達と喧嘩した時。
祖父母が亡くなった時。

波が全て洗い流してくれそうな気がして、幼い雅紀は体調が良い時は大抵来ていた。

物思いにふけっていると、波の音に混ざり、ギュッギュッと足音が聴こえてきた。
その足音が誰の音か、雅紀にはすぐに分かった。
逃げ隠れしているつもりは毛頭無いのだが、見つかるのが惜しい気も少しする。
しかし、立ち上がって逃げる理由もないし、何だか億劫にも思え、雅紀はそのまま座っていた。

智「…見つけた。」

安心したような声が聞こえ、足音はすぐ隣で止まる。
観念したかのように、雅紀は小さく溜め息をついた。

雅「…見つかっちゃった。」

フフッと笑いながらも、雅紀は海から視線を外さなかった。
智は、雅紀の隣に座り、同じように海を見た。

智「…何も見えねぇな。」

それも、そのはず。
時刻は、日付をまたいだ。
街灯があるものの、夜の海は暗く、何も見えない。

雅「…うん。何も見えないね。」

波の音が響く。
二人は何も言わずに、暫くそのまま座りこんでいた。
久しぶりの二人きりの時間。
そう言うと語弊がありそうだが、兄弟が多い桜葉家では珍しいことだった。

特に上の兄二人は、自宅で仕事をしているとはいえ、早朝から夜までなので、家にいるようでいないのが事実。

雅紀は専門学校が終わった後、体調が良い日は夕方までアルバイトをしている。
双子は帰宅部とは言え、現役高校生。学校行事などで忙しい日も多い。
上の兄二人は、毎日のように一緒だが、下三人はそうでもない。
兄二人のどちらかと二人きりなんて、ここ最近はそうそう無かった話だ。

雅紀は、何だか少し得をした気分になった。
隣に兄がいるだけで、何だか落ち着く気がする。

しかし。
智がいるということは、きっと翔もいるだろう。
弟二人がいるかは微妙だが、この兄達なら連れてくることはしまい。
と、いうことは。
兄二人が自分のためだけに、動いてくれた。

素直に、嬉しいと思えればいいのだろうが。
また、弟達に寂しい想いをさせてしまったと、雅紀は心の底で呟いた。