勘と嘘 ページ5
階段を降りると、翔が小声で話してくる。
翔「雅紀、そろそろ起こしてやって？まだ、起きていないんだろ？」
和「えぇ、そうなんですけど、何で、翔兄知っているんですか？」
翔「それは、兄の勘！」
雅紀に次いで、嘘が下手な翔。
双子にかかれば、勘なんてのが嘘だとすぐバレる。
しかし、翔は忙しそうに、すぐにその場を離れた。
和也もそれは理解しているので、腑に落ちないまま潤のところへ戻る。
潤「翔兄、何だって？」
和「まーくんがまだ起きていないだろうから、起こしてくれって。」
潤「何で、起きていないの知っているんだろうな。」
和「兄の勘、だそうですよ？」
そんな勘、無いくせに。と潤が困ったように笑った。
きっと、兄２人は何かを知っている。
でも、それを今問いただすのは、しない。
２人はそろって、雅紀の部屋に向かった。
ドアをノックしても、返事がない。
潤「まー？朝だよ？」
和「入りますよ〜。」
言い終わる前にドアを開け、部屋に入る。
当然と言えば当然だが、そこには寝ている雅紀がいた。
壁を向いているので、２人には背中が見える。
和「まーくん、朝ですよ。」
ベッド脇に立ち、顔を覗き込むようにして、和也が気が付いた。
和「…熱、ぶりかえしたのかな？」
潤も慌てて、覗き込む。
雅紀の額には、冷えピタが張ってあった。
和也が、ベッドの枕元の引き出しから体温計を出し、雅紀の脇に挟む。
雅「…ん？あれ、和、潤。どしたの？」
気が付いた雅紀が、目を擦りながら聞いてきた。
潤「どしたの？は、こっちの台詞だよ。まー、熱ぶり返したの？」
雅「…あぁ、これね。」
少しね、と苦笑しながら、雅紀は額から冷えピタを剥した。
雅「でも、もう大丈夫だよ。寝たし。」
身体を起こしベッドに座ると、体温計が計測終了を知らせた。
和「…37.3℃」
潤「微妙だな…。」
雅「大丈夫だって、そんなの熱のうちに入らないから。ね、潤、今朝のご飯なぁに？」
潤「ホットケーキとヨーグルトサラダ。」
雅「やった〜！」
嬉しそうに部屋を出て行く兄の背中を、双子はため息をつきながら見送った。
和「…あとで、智兄と翔兄に、報告しときますね。」
潤「頼むわ…。」
リビングから、雅紀の声がする。
雅「和、潤！ほら、早く食べないと、学校遅れるよ〜！」
二人は時計を見て、家を出る時間が迫っていることに気付き、慌ててリビングに向かった。
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作成日時：2013年1月31日 23時
