野菜 ページ4
智が、机の上にあった本を指差す。
それは、野菜の図鑑だった。
翔「…ん？野菜？？」
智「そう、野菜。」
翔「何で、野菜？」
雅紀はカフェの専門学校に通っている。
将来は、兄二人と一緒にパン屋で働くと、高校３年生の時に宣言した雅紀。
ただ、長男・智はパン職人、次男・翔は経理。
自分が同じ道を進んでも、役に立てないからと、雅紀はパン屋にカフェ併設案を提案し、それを実行しようとしている。
その雅紀が、何故か学校の教科書と一緒に、野菜の図鑑を机に広げていた。
智「何でだろうね。こればっかりは、本人に聞かないと分からないや。」
眉を下げて、ふにゃんと笑う兄に、翔は既に答えを知っているんじゃないかと、何故か思った。
昔から、この兄は勘が鋭い。
智「さ、翔君。パンの仕込みするから、手伝って？」
翔「うん。」
２人は静かに部屋を出る。
朝７時
潤「和、これ智兄達に届けて？」
和「は〜い。」
双子の弟に、青と赤の２つの袋を手渡れた和也は、階段を降りる。
自宅の１階は、兄二人が経営しているパン屋になっていて、朝のこの時間帯は出勤前の人で混雑していた。
和也は、カウンター内のいつもの場所に袋をそっと置き、階段をまた駆け上がる。
和「行って来ましたよ。」
潤「お、サンキュー！」
潤はテーブルに朝食を並べているところだった。
和「…あれ、まーくんは？」
いつもなら起きているのに、今朝はいない。
潤「また、具合悪いのかな…」
一気に不安が募る。
双子のすぐ上の兄は、昨日学校に復帰したばかりの病み上がりだ。
様子を見に行こうとすると、階下から翔の声がした。
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作成日時：2013年1月31日 23時
