夕焼け小焼け【緑さんメイン】 (ページ24)

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赤とんぼ７ページ24

気配なく背後から突然聞こえた、もう一つの声。
振り向けば、そこには弟達を抱えた智がいた。
和也と潤を押さえつけていた二人は、床に伸びている。

男１「なっ！？いつの間に！！」
智「今。」
和潤「さとし兄ちゃん！！」

自分の身に起きたことが分からず、目を開けた二人は驚いて智に抱きついた。

智「ごめん、恐い思いさせたな。」
和「ううん、ぼくたちこそ、ごめんなさい…。お兄ちゃんたちをさがしてたの。」
潤「お兄ちゃんたちの、おともだちっていったから、ついてきちゃった…ごめんなさい。」
智「和、潤。あの人、俺達のこと『お友達』って言ってたのか？」
和「うん。」
潤「だって、おなじがっこうのおようふくきているって。」
智「…そか。」

智は翔達に背を向け、和也と潤を抱きしめる。

智「いいか？恐かったら、目を閉じて耳を塞いでいるんだぞ？」
和潤「うん。」

腕の中の弟達を確認し、智は翔を振り返った。

翔「誰がお友達だって？何、俺らと仲良くしたいの？」
男１「はっ！誰が、お前らと仲良くするかよ。」
翔「弟を人質にしやがって…。ただで済むと思うなよ？」

その時、智の肩越しに和也と潤は見た。
柔らかく、でもとても冷酷に笑う翔を。
そして、たった一撃で相手を倒してしまったのを…。

翔「和也、潤！怪我ない？」

自分達に駆け寄って来た兄は、いつものどこか残念な兄。
わたわたと慌てているし、先ほどの格好いい姿は欠片もない。
智は二人の身体を見て、怪我がないか確認している。

和「…う、うん。だいじょうぶです。」
潤「ぼくも。…そうだ！お兄ちゃん、たいへん！」
翔「大変？」
和「あ、そうなの！まー兄がたいへんなんです！」
智「雅紀が？」
和潤「まー兄がしんじゃうよー！」
智翔「なっ？！」

泣き出した和也と潤を、兄達は背におぶり、家に向かって走り出した。

兄達の背に揺られながら、夕焼け空と赤とんぼがいつもより近く見えたその景色が、二人を温かい気持ちにする。

その日を境に、智と翔は甲斐甲斐しく弟達の面倒を見るようになった。
雅紀の看病もやり、二日後には元気に走り回る姿が桜葉家に戻る。

翔「こら、雅紀！まだ寝てなきゃダメだろ！」
雅「だって、もう元気だもん！！」
翔「だぁめ！あ、和也、潤！！寝ている智兄の顔に落書きしちゃダメだろ！」
和「だって、ひまなんですもん。」
潤「にげろー！」
翔「…しかも、油性ペンじゃん！こら、待ちやがれ！！」
和潤「きゃ～！」
智「…スースー…」