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オレは必死に走った。走って走って、息が切れても走り続けた。体力なんてあるわけないが、疲れたなんてことはなかった。それどころじゃなかったから。
「何…やってんの…らだお…くん…!」
やっとの思いでたどり着いたそこに、らだおくんはいた。
「あーあ。見つかっちゃった」
いつもと変わらぬ笑顔でそう言った。
「こんな…ところで…ほんと…何してんの…」
息を切らしながら言う。
ここは崖でらだおくんは崖の先端に座ってる。一歩後ろに行けば崖から落ちて海に落ちる。この高さでは必ず助からない高さ。
「えー?ゲームだって」
「そうじゃなくて…隠れる場所ならもっと他に」
「俺さ、自分でちょっとした賭けをしてたんだよなー」
らだおくんはオレの言葉を遮って話し出す。
「もしきょーさんかレウさんかコンちゃんの誰かに見つかったら俺の負け。普通に帰る。で、誰も来なかったら俺の勝ち。ここから身投げ」
「は?」
「そして、緑君に見つかったら引き分け。全部話して身投げする。最初は緑君巻込もうと思ってたけど流石に無理だわ笑」
「え」
「俺の馬鹿みたいな話、聞いてくれる?」
「…当たり前でしょ」
「よかった」
そう言うとらだおくんは立ち上がり、夕陽の方を見ながら話し出した。
「俺は自分で選んだこの配信者という道にはもちろん、満足してる。
けど、リスナーに何か言われるたびに思うんだよ。本当にこれでいいのかって、本当にみんなを満足させられてるかって。
リスナーのdisりとかは本心じゃないこともリスナーの死ねが本当に死んでほしい訳じゃないこともわかってる。わかってるんだけど…やっぱり心に傷をつけたり、俺にのしかかってきたりするんだよ。
それは積み重なってって、弱っちい俺には耐え切れなくてさ。」
そこまでらだおくんは話して、くるっとこちらを向く。
「だから、ここに捨てに来たんだよ。こんだけ重いから捨てるのにも大変だからな」
細めた目には涙が見え、つーと�茲を一筋の涙が零れおちる。
「ふぅ。あー!すっきりしたわ!ありがとな、緑君。最後に全部話せて良かったし、最後に会えたのが緑君でよかった」
震えた声でらだおくんは言う。
じゃあ、なんで泣いてるの?最後ってなに?なんで…なんでそんな悲しそうなの?
「お前は最後まで最高の相棒だったよ」
やめてよ。だったよなんて過去のことみたいじゃないか。
「じゃあな!おっつぅ!!」
らだおくんは一歩後ろに下がろうとする。
「待って!!」
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作者名:midoha | 作成日時:2019年5月24日 19時