夜狐奇譚 (ページ4)

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宿にて② ページ4

僕が宿屋に戻ると女将さんが焦ったように僕にかけよった。

「ちょ、ちょっと！あんたどこ行ってたのよ！！」

先程までの丁寧な態度から一転、女将は僕の肩を掴んで怒鳴るように言った。
肩に女将さんの指が強くくいこむ。

「少し散歩をしていたのだが何か問題が……？」

「そ、そうだったんですの…オホホ…てっきり逃げられたかと……」

女将さんはパッと僕の肩から手を離した。

「金はちゃんと払うさ……僕、少し疲れたので部屋に戻らせてもらいますね」

女将にニコッと微笑みかえし、部屋に戻ろうとした。その時、女将が僕の背中にこう言葉をなげかけた。

「そういえばあんた……水木とかいうよそものの男にあったでしょう？」

やはり、そうか…やけに視線を感じると思っていたが監視されていたとは……

「困るんですよねぇ…勝手な真似をされると…あんたは朝飯も食べないしこれじゃあ計画倒れよっ！…はやく、はやく龍賀家に納品しないと」

不快感を隠しもせず、顔を歪ませ、一点を見つめ何かに怯えるようにぶつぶつと呟く女将。
女将の言葉から察するにやはり、朝食には毒が入っていたのか…
納品っていったいなんのことだ…？

「いったいなにに怯えているんですか？その龍賀家に納品って、どういうことですか？」

女将は今度は顔を青くして後ずさる。

「……あんたには関係ないよっ！」

「おやおや、騒がしいですねえ…」