夜狐奇譚 (ページ3)

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邂逅ページ3

【水木side】

この村はなんなんだ…人に会わないというのに見られているような、監視されているような視線を感じる。綺麗な青空と一面に広がる田園風景とはうらはらに、この村には不気味な雰囲気さえただよっていた。

すると、前から一人の男が歩いてきた。村人だろうか

「すみません！」

男に声をかける。その男は濡烏色の髪をざんばらに肩までのばし、丸襟のシャツの上に袴を履いた典型的な書生の装いをしていた。つり目の三白眼からはどことなく剣呑な印象をうける。無造作な立ち振る舞いだが、背が高いせいかどこか雰囲気がある男だ。

「はい、なんでしょうか？」

「東京の血液銀行から来ました。水木といいます。貴方、村の人ですか？すみませんが…龍賀邸は…」

名刺を差し出しながらそう言うと、男は困った顔をして口を開く。

「いえ、私は取材旅行に来たしがない作家でして…朝食の前に少し散歩をしようと思いましてね。名は紺堂です。」

「紺堂さん…ですか」

「知らなくても無理はない…なんせしがない小説家ですから」

ハハハッと乾いた笑いをする紺堂に合わせて愛想笑いをする。

「龍賀邸ならこの先ですよ。では僕はこのへんで…」

そそくさと先を急ぐようにすれ違う紺堂を横目に思う。
アイツは負け犬だ。なにせ向上心がない。それに現状を変えようともせずにヘラヘラと笑っている。
俺は死んでも負け犬になんかなるものが
そのためにこのチャンスを絶対にものにするんだ。
俺は今一度決心した。