四季桜守 (ページ9)

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第２章【autumn】ページ9

～秋月さくらの実体～

夕焼け空に、微かに藍色のグラデーションが入る。

見慣れないオレンジ色の空をぼんやりと眺めて帰る。

自分が所属しているバレー部は、県の中でも常にトップを争う程のレベルで、こんなに早く帰れる日は少なかった。

「さくら」

不意に誰かに名前を呼ばれ、肩を捕まれる。

この前体育で起きた出来事と似たような感覚を覚えたが、優しく暖かいその手はすぐに違うのだと思わせた。

振り向くとそこには吉野蓮がいる。

幼馴染みである彼が、一人でいることが珍しかった。

「あれ、今日は一人？」

「まぁな。あいつらまた変なこと企んでるらしいから抜け出して来た」

蓮の周りには多くの人が集まるが、蓮は彼らのいたずら事に流されたりはしない。

「そういうとこ、本当にあんたらしいわ」

自分もどちらかと言えば、紛らわしい人間関係は好きではない。

そんなさっぱりとした性格を一番に理解しているのはやはり、自分と同じ考え方を持っている蓮なのであった。

「それはお前も同じだろ」

「それな」

話す機会が滅多になくても、やはり会えば自然と会話がはずむ。

昔は当たり前だったこと。

そんな久々の夕焼け空と、久々の幼馴染みにほっとするのであった。