金木犀―3― (ページ13)

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13　羨ましい　友也ページ13

友也―

友「好きな人を?」

「うん。」

正直すごく好きで付き合った事がないから
好きなのに振るという感覚なんてもっと分からない

友「ない」

「そっか…」

友「その人は…Aにとってどういう人だったの?」

「…初めての彼氏だった。」

友「え?」

「中高大、憧れの人とか、好きな先輩とかはいたけど実ってほしいとか付き合いたいとは思った事がなかったんだよね。友達が彼氏の話とかしてるのも話を聞く事とかアドバイスとかはしてたけど内心では冷めてて。」

という事は大学が終わってから付き合ったって事か?
そんな事よりそれが初めての彼氏って周りの男は何をしてたんだ…

友「そうなんだ」

何回か飲みながら話した事はあったけど彼女が自分の事を話すのは初めてに等しかった
聞き上手だったのはそういう話をいつも聞いてたからか。

「冷めてた自分がかっこいいとも思ってたんだろうね(笑)
だけど彼に会って変わった。この人の手を離したくないって思った。」

そうちょっと切なそうに言う彼女

「けど、どうしても…別れなきゃいけない理由ができたのね。
私も、きっと彼もお互い好き同士だったけどふらないといけなくなった。」

友「その理由って?」

「それは言えないなあ…けど…辛かった。『どういう事?』って聞かれても理由がないんだもん。
思ってもない理由を並べてさ、けど「嫌いになった」って嘘はつけなかった…
そう言えたら一番楽なんだろうけどそれだけは言えなかった。」

その時を思い出したのかして流すことはなかったけど、目に涙を浮かべる彼女

友「それで泣いてたのか…で?今も忘れられないと」

「……うん。ははっださいよね。忘れようと思って仕事もバンバンやって、
休日も予定をいれてってしてたけど…ちょっとしたことで思い出すんだよ。」

友「ださくなんかないよ。」

そう彼女の肩に手を置く

それだけ好きな相手だったんだろうって思うと相手がうらやましい

いつかのお昼の嬉しそうな顔も
カラオケでの嬉しそうな笑顔も
おしゃれして最高に可愛い彼女の姿も
全部向けられていた相手が羨ましくて仕方ない

けど…その相手とはもう終わったんだ。

もうそろそろ俺の番が来てもいいんじゃないか?

そんな事が頭をよぎる

最低だよな。けど…俺だって苦しんだんだ

友「良い事教えてやろうか?」

「良い事?」

友「その彼を忘れる方法」

「へ?」

こっちを向いた彼女の唇を奪う

友「また、笑っていればいいんだよ」