道の先で【灰谷竜胆】

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大丈夫か？と心配してくれる竜胆くんににっこりと笑う。



『大丈夫
ちょっと心配性なだけで意地悪してるわけじゃないから
訳を話せばママもわかってくれるよ』



「そか、でも無理すんなよ
もしダメなら俺が準備してやるから」



そっちの方がママにバレたら大変なことになりそうだけど、それは言わずにありがとうと伝えておくことにした。



「じゃ、次いつ会える？」



『ママが仕事終わるまでか、また夜勤の時かだね』



「夜は危ねぇから昼間飯でも食いに行こうぜ」



うん。と返し、おそらく2日後ならママは日勤のはずだと伝えた。



『明日にケータイ買ってくれるといいな』



「そうだな
Aのケータイに1番に登録する番号は俺かな」



『2番かも』



「1番はママか」



『たぶん』



「じゃ1番初めに電話かける相手は俺がいい」



『私もそうなるといいな』



「多くかける相手も俺ね！
俺がかけるよしょっちゅう」



ふふっと笑い合って手を繋いで歩けば家なんてすぐで、玄関の前でじゃ。と手を上げる竜胆くんを見つめる。




『今日はありがとう
楽しかった』



「こちらこそ
また明後日な」



『うん、……あの、』



足元を見てモジッとする私に、ん？と首を傾げた竜胆くんの声が優しくて、勇気を出して少し頭を下げる。



『こ、これから…よろしくお願いシマス…』



2秒ほど沈黙の後、ふはっと笑い声が聞こえて顔を上げた。



「や、ごめん
まさかそんなこと言われると思ってなくて」



あはは。と笑う竜胆くんは、私を習って足をそろえて頭を下げた。



「こちらこそよろしく」



なるほど。確かに突然頭を下げられるとびっくりしちゃう。



顔を上げた竜胆くんとふふっと笑い合い、またね。と言い合う。



が、竜胆くんがなかなか動かないのだ。



「入んねぇの？
Aが家に入ったら俺も帰るよ」



『でも私も竜胆くんが見えなくなるまで見送りたい』



私の言葉にフッと笑った竜胆くんは、わかった。と言ってきた道を戻るべく足を踏み出した。



「おやすみA」



『おやすみ竜胆くん、気をつけてね』



ん。と聞こえた声を最後に背中を向けて歩き出す。



角を曲がって見えなくなった背中にようやくポッケから家の鍵を取り出した。



パタンと閉まった扉にもたれて息を吐く。




沢山ドキドキした。



楽しかった。



まさかあの灰谷兄弟の竜胆くんとなんて、夢かもしれないと1人になって思う。

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